テラーノベル
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(ソロコンに出る、と決めたはいいけど──)
自宅に戻った志絵は、購入したスコアをパラパラと見ながらも、身体の中から不安と恐怖がジワジワと滲み出るのを感じていた。
心の奥底で眠っていたネガティブな感情が、徐々に大きく志絵を蝕んでいく。
また、本番で頭が真っ白になって、失敗してしまったら……。
「怖いっ…………ステージに上がって楽器を吹くの……やっぱりまだっ……こっ……怖いっ!!」
顔が強張り、キャットアイはカッと見開かれ、心臓がバクバクと打ち鳴らされる。
「っ…………はぁ……はぁ…………っ……はぁ……はぁ……うぅっ」
喉がキュッと締め付けられていき、呼吸が荒くなっていくと、志絵は胸元に手を当てて落ち着かせようするけど、治ってくれない。
冷や汗が伝い、腰から背中に掛けてゾクリと泡立つ。
彼女の脳裏に、高校三年の時に立った吹奏楽コンクール都大会の残像が何度も掠めていった。
***
高校生活最後のコンクール。
この年の自由曲にはソプラノサックスソロがあり、志絵はアルトサックスパートだけど、曲の途中でソプラノサックスに持ち替えて演奏する事になっていた。
部内のソロオーディションで選ばれ、気合が入っていた彼女は、何度も何度もソロの練習を重ね、その甲斐あって八月の地区大会では金賞を取り、藤森学園高校は都大会に駒を進める。
響美学園音大に受験する事を決めていた志絵は、既に大田に師事しており、ソロ部分をさらに磨きを掛けようと、レッスンで特訓してもらっていた。
都大会の日程はシルバーウィーク期間中。
本番一週間前にも、サックスソロの部内選考オーディションが行われ、彼女は地区大会に引き続き、ソロ部分を演奏する事になり、志絵は『必ず全国大会に出場する』と熱い思いを胸に大会当日を迎えた。
藤森学園高校の演奏順は、一番最後。
コンクール会場に向かう前、学校に集合し、音楽室で本番さながらの練習をした後、部員たちはバスに乗り込み、会場である府中のホールへ向かった。
控室でウォーミングアップと音出し、合奏の基礎練習を終えた後、三年生が集まって円陣を組む。
『高校最後のコンクール。私たちは絶対に全国大会の切符を手にする! 今まで積み重ねてきた練習を信じて、今日も演奏を楽しむよ! みんな、準備はいい?』
部長であり、志絵の親友でもあるトランペットパートの亜美が発破を掛けると、他の三年生が拳を作り、天に突き刺すように掲げた。
『藤森学園高校の皆さん、舞台袖に移動をお願いします』
係員が控室に来てアナウンスをすると、いよいよか、と出場メンバーに緊張が走った。
舞台袖に立った五十五人のメンバーは、張り詰めた空気の中、息を潜めて舞台上で他校の演奏する様子をじっと見つめる。
そしてついに、志絵たちの出番。
『プログラム十六番 藤森学園高等学校。課題曲Ⅳ、自由曲は──』
司会の紹介を聞き終えた志絵たちは、引き締まった表情で、戦場と化したステージへ歩き出した。
コメント
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わあ……第27話、読んだよ〜!!📖✨ 志絵ちゃんの「怖い」って気持ちが、もうひしひしと伝わってきて胸がギュッてなった😢💦 過去のコンクールの回想も重なって、本番前の不安がリアルすぎる……。高校最後の舞台、なにかあったんだろうなって想像しちゃう。 ソロコンに出るって決意した勇気、絶対無駄にならないでほしいな……!!応援したくなる回だったよ🌸
管野アリオ
733
#大人ロマンス
桃下結衣
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#ロマンスファンタジー
Jasmine
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