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チャイムが鳴る。昼休みの合図。だが、遥にとっては「スイッチの音」だ。
「じゃあ、今日も“昼のぶん”やろうか」
笑い声。
スケジュールは、もうホワイトボードの脇に貼られている。
「奴隷利用申請表」──教師の許可済み印があるのは、ただの悪ふざけなのか、それとも本物なのか。
(いや、どうでもいい)
遥はもう、“されること”に抵抗しない。
ただ、どれだけ長く、どれだけ深く、どれだけ壊されるか──それを受け入れるしかない。
「制服、脱がせるのは男子。女子は今日、“言葉担当”ね」
「昨日の“泣き顔”、めちゃくちゃ映えてたから、あれ録るの私の役」
「“昨日と同じくらい泣かせて”って、リクエスト来てるし」
誰も、遠慮しない。
むしろ、どこまで“晒せるか”“壊せるか”に熱中している。
シャツのボタンが、一つずつ外される。
ネクタイが、爪でちぎられる。
制服の裾がまくり上げられる。
パンツは、すでに朝のうちに“チェック”済み。履き替えは許されなかった。
「こいつ、マジで、恥とかないの? 快感に負けてんじゃね?」
「じゃあ、今日も“感じてる顔”録っとく?」
誰かがそう言って、スマホを構える。
──記録される「恥」。
──拡散される「証拠」。
──同級生、後輩、教師、他校の誰か。
それを誰が見るかなんて、もう気にしていない。
(だって、もう“戻る場所”なんて、ない)
遥の中には、「恥ずかしい」という感情だけが最後に残っていた。
けれどそれも、“感じすぎて壊れる”ほど積み重なれば、快感とも苦痛ともわからない何かに変わる。
だから今、声を漏らすたび、思う。
(これは俺じゃない。これは──“されるための肉体”だ)
授業中、机に突っ伏していた遥のシャツの背中に、落書きが残っていた。
──「今日:貸出済」
──「午前:体育倉庫/午後:女子更衣室」
──「返却予定:放課後」
それを見た教師は、板書を続けながら、ただ一言。
「……次、貸出希望のやつは“予定簿”に名前書いとけよ」
誰も笑わなかった。
“制度”とは、そういうものだ。
慣れれば、怖くない。
(俺が壊れることが、日常だ)
(その記録が、笑われる。拡散される。何度も再生される)
(それでも、“される側”は選べない)
(選べないくせに──「何もされないことが怖い」と思ってしまう)
(……もう、どこまでが俺だったか、わかんねぇ)