テラーノベル
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男女で部屋を分ける、と告げられた瞬間から、遥はもう“決まっていた”。
「お前、そっちだろ」
男子の一人が、背中を強く押した。
勢いよく前につんのめる。
「ちが……」
言い終わる前に、別の男子が足を引っかける。
床に手をついた。
「うわ、汚っ」
「床触った」
笑い声。
「女みたいだから女子行けよ」
「臭そうだし」
そのまま、女子の列へ押し込まれる。
「はい決定」
「男子に戻ってくんなよ」
教室の扉が閉まる直前、
男子の声が飛んだ。
「許されるまで出てくるな」
「ちゃんと反省しろよ」
何を、とは言われない。
女子の教室に入った瞬間、ひそひそ声が一斉に立つ。
「……あれ、遥だよね」
「なんで女子にいるの?」
「臭くない?」
「昨日、体育の後そのままだったらしいよ」
事実かどうかは関係ない。
言われた時点で、真実になる。
席に座ろうとすると、
「そこ座らないで」
「あとで拭くから」
机を引かれ、壁際に追いやられる。
「そこならいいでしょ」
「隔離」
休み時間。
誰かが鼻をつまんで言う。
「近づくと臭い」
「汚い」
別の女子が笑う。
「ねえ、さっき男子に何したの?」
「殴ったとか?」
「触ったとか?」
遥は首を振る。
「……してない」
「嘘」
「してない人がここ来ない」
噂は、膨らむ。
「トイレ掃除サボったんだって」
「だから臭いんだ」
一人が言い出す。
「じゃあさ」
「これやったら、許してあげる」
床に落ちている雑巾を指さす。
「それ、絞って」
「臭いの消えるかも」
遥は動けない。
すると、後ろから、強く背中を蹴られた。
「ほら」
「早く」
壁にぶつかる。
「やらないなら、もっと汚いって言うよ」
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「男子にも言う」
遥は、黙って雑巾を掴む。
冷たくて、湿っている。
「ちゃんと絞れよ」
「逃げんな」
その様子を見て、誰かが笑った。
「ほら、やっぱり汚いの似合う」
二時間目の途中、男子が様子を見に来る。
「反省した?」
誰かが答える前に、女子が言う。
「まだ」
「臭いまま」
男子の一人が入ってきて、遥の腹を殴った。
鈍い音。
「許してほしいんだろ?」
「だったら、ちゃんとしろよ」
別の男子が、足を払う。
床に倒れる。
「倒れてんじゃねぇ」
「床汚すな」
起き上がろうとすると、今度は背中を蹴られる。
「はい、もう一回」
「ちゃんと謝れ」
遥は、震える声で言う。
「……ごめんなさい」
「何が?」
答えられない。
その瞬間、頬に平手が飛ぶ。
「分かってないから叩かれるんだろ」
誰かが言う。
「じゃあさ」
「もう一回女子で我慢したら、許すってことで」
条件が出る。
終わらせないための条件。
二時間目が終わる頃、遥は、立たされていた。
足が痺れて、息が浅い。
男子が言う。
「まあ、今日はこのくらいで」
「反省してたしな」
その言葉で、すべてが“正当化”される。
暴力も、噂も、全部「躾」になる。
遥は、教室に戻される。
誰も、謝らない。
誰も、悪くならない。
(……俺が悪かったんだ)
理由は、まだ分からない。
でも、
謝る役だけは、
この日、はっきりと覚えさせられた。
コメント
1件
うわ……読んでいて息が苦しくなりました。 「言われた時点で、真実になる」——この一文が、序盤からずっと心に刺さっています。遥くんは何もしていないのに、周りが“そう決めた”ことでどんどん追い詰められていく。特に「終わらせないための条件」を出すところ、いじめの構造として本当にリアルで、読んでいて胃が重くなりました。 暴力も噂も、最後は“躾”にすり替わって、誰も悪くならない。でも遥くんだけが「俺が悪かった」と謝るしかない——その理不尽さが、場面の温度とともにひたすら伝わってきました。ruruhaさんの描写、細かい仕草や声のトーンひとつひとつが、クラスの空気を見事に再現していて、本当に辛かったです……