テラーノベル
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その頃、由希は特別室――大迫の病室にいた。
「では、大迫様。明日、野中院長からお話がありますので」
「うん、分かった。つまりさ、このひどい偏頭痛は、特に心配するほどのものじゃないってことでしょ? 検査でも異常なかったし」
「おそらくそうだと思います」
「とりあえず安心したよ。それにしても、心配しすぎなんだよなぁ、うちの親は。家族全員が頭痛持ちなんだから、遺伝だって言ってるのにさ」
「でも、しっかり検査したうえで異常がなかったのですから、安心ですよね」
「まあね。ってことは、明後日あたり退院できるのかなー」
そう呟いたあと、大迫はふと思い出したように由希へ向き直った。
「あ、そうだ! 平子さん。退院前に、一度、リリちゃん……じゃなかった、七星ちゃんを病室に呼んでもらえないかな?」
「遠坂……さんを、ですか?」
「うん。退院する前に、一度ゆっくり話しておきたいんだ」
その言葉に、由希は心の中でほくそ笑む。
「承知しました。そういえば……」
「ん? 何?」
「遠坂さん……大迫さんに好意を寄せているみたいですよね?」
「え? まじで?」
その瞬間、大迫の顔がぱっと明るくなった。
「ええ。先日彼女が控室で話しているのを偶然聞いてしまったのですが……実は遠坂さん、お店を辞める前から大迫さんのことが好きだったそうですよ」
「え? またまた~、平子さん、からかってるでしょう~」
「いえ、からかってなんていません。私、はっきり聞いたんです」
「本当に? そっかあ……だったら、そうならそうとはっきり言ってくれればいいのに」
「ということは、大迫様も?」
「まあね。あのとき彼女が店を辞めていなかったら、交際を申し込んでいたかもしれないからね」
その言葉に、由希は思わず息を呑んだ。
(え? ただの遊び相手じゃなくて“交際”? 御曹司が水商売の小娘相手に……どういうこと?)
動揺を隠しながら、由希は問いかけた。
「遠坂さんと……お付き合いなさるおつもりだったのですか?」
「そうだよ。あんないい子、見たことないからね」
「………」
信じられない思いのまま、由希はさらに踏み込んだ。
「えっと……大迫様のようにお家柄がご立派な方が、水商売をしていた女性と真剣にお付き合いなんて……ご両親が反対されるのでは?」
「いや、それは心配ないよ。うちの母親も、もとは銀座のクラブのママだったし」
大迫は頭の後ろで手を組み、あくびを噛み殺しながら言った。
(嘘……! ってことは、“大迫家”は嫁の学歴や家柄には一切こだわらないってこと?)
由希の胸に、もやもやとした感情が渦巻く。
ならば、自分が大迫の妻になってもいいのでは――そんな考えが頭をよぎった。
だが、東京から来た名医の妻の座も捨てがたい。
そして、どちらの男性からも好意を寄せられている七星の存在が、急に憎らしく思えてきた。
(なんであんな小娘が、二人からの寵愛を受けてるのよ! もうっ!)
怒りを必死に抑えていた由希の脳裏に、ある“名案”がひらめいた。
「ねぇ、大迫様?」
「ん?」
「私、お二人のキューピッドになりましょうか?」
「キューピッド?」
「ええ。明日、院長からの説明が終われば、おそらく明後日には退院ですよね。となると、大迫様が遠坂さんと話せるのは明日の夕方から夜にかけて……。その間、ふたりきりにして差し上げましょうか?」
言い終えた由希は、大迫に見えない角度でにやりと笑った。
「マジで? それは嬉しいな~」
「喜んでいただけて光栄ですわ。あ、それと……
遠坂さん、こんなことも言ってましたけど……」
「え? 何? なんて?」
由希は少し恥じらうように視線を伏せ、困ったように口元を押さえた。
「それが……私の口からは……恥ずかしくてとても……」
「気になるなあ。七星ちゃん、どんなこと言ってたの? 俺は気にしないから、遠慮なく言ってよ」
「でも……」
「言いかけてやめるのはずるいなあ。いったい彼女はどんなことを言ってたの? 頼む、教えてくれ!」
大迫が身を乗り出して頭を下げると、由希は“仕方ない”という顔をして、大迫の耳元にそっと囁いた。
「遠坂さん、“大迫さんに一度でいいから抱かれたい”と……そう言ってました」
大迫は目を見開き、信じられないという表情で由希を見つめた。
「本当に?」
「ええ。間違いありません。それほど大迫様に惚れているんですね」
「マジかぁ~。だったら、あの頃言ってくれたらよかったのに」
満面の笑みを浮かべた大迫は、ふと思い出したように尋ねた。
「ちなみに、この部屋って内側から鍵かけられるよね?」
「ええ」
「カメラは?」
「ございません。重篤な患者様のときだけ設置しますが、大迫様は検査入院ですので」
「そっか。じゃあ、ばっちりだな」
そう呟くと、大迫はベッドサイドの引き出しからブランド物の長財布を取り出し、一万円札を十枚ほど抜き取って由希の手に握らせた。
「大迫様?」
「これはお礼の前払い。明日の夕方、七星ちゃんをここに連れてきてくれるよね?」
にやりと笑う大迫に、由希は微笑んで頷いた。
「もちろんです」
「じゃあ、そういうことでよろしく!」
由希は受け取った札束をポケットへしまい上機嫌な大迫に一礼すると、不穏な笑みを浮かべたまま病室を後にした。
コメント
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学歴とか関係ないなら私がお嫁に‼️なんて思っている由希‼️ それ以前にその根性曲がりで何人も男をキープしていて 七星ちゃんを陥れてようとしているあなたでは 誰も相手にしないです‼️ こんな嫌な看護師早く解雇して下さい 野中院長と優人先生 七星ちゃんの危機をなんとか回避してくださいねお願いします
まぁ呆れた看護士よね…天罰下るかもね(TT)
おーーっとやっとゆっくり読めると思い一気読みしてたらとんでもない汚血女がいた😤 貴女は誰にも選ばれないです。