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夜の商店街。縁日の屋台が並び、提灯の明かりがずらりと灯っていた。 隼人は少し落ち着いた顔をしていたけれど、大地はすでに目を輝かせている。
「おっ、金魚すくいあるじゃん! 隼人、やろうぜ!」
「ガキかよ」
「いいだろ? 俺、こういうの毎回熱中しちゃうんだよな」
気づけば大地はしゃがみ込み、ポイを握りしめて挑戦していた。結果は――。
「あーっ、くそっ! また破れた!」
「だから言ったろ」
「でもな! 一匹はすくえたんだぞ!」
どや顔で見せつけられた金魚は、すでにビニール袋の中で泳いでいる。隼人は思わず笑ってしまった。
続いて射的、わたあめ、焼きそば……。大地は片っ端から屋台に挑み、見事にから回る。
射的では景品を狙って外し、わたあめは大きすぎて顔が隠れ、焼きそばは熱すぎて「あちち!」と叫ぶ始末。
「……お前、ほんとに楽しそうだな」
「だろ? 隼人ももっとはしゃげよ。ほら、これ食え!」
差し出されたのは、串に刺さったフランクフルト。思わず受け取って口をつけると、大地が「おー、似合ってる!」と大げさに拍手する。
くだらない。でも、隼人の胸の奥に、妙な温かさがじわりと広がっていく。