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人混みの中、大地はまたもやテンション全開だった。
「お、見ろよ隼人! リンゴ飴だ! これぞ祭りの王道!」
買ったばかりのリンゴ飴を片手に、嬉しそうにかぶりつこうとする。
――が。
「うわっ!」
前から走ってきた子どもとぶつかり、大地のリンゴ飴はあっけなく宙を舞った。
「あーーーーーー!! 俺の初リンゴ飴がぁぁぁ!」
「初ってなんだよ。……ほら」
隼人は自分のを無言で差し出した。
「え、いいの?」
「どうせ一口で飽きるくせに」
「お、さすが隼人! ……あっ」
受け取った瞬間、大地の手が隼人の手とがっつり重なった。ほんの数秒なのに、隼人の顔が思わず熱くなる。
「……なに固まってんだよ」
「いや、なんでもねーよ!」
大地は気にも留めず、しゃくっと豪快にかぶりつく。
「うんめぇ! やっぱ祭りはこれだわ!」
「……バカ」
横顔を見て、隼人は心の中でぼやく。どうしてこんなに、何でもない一瞬で振り回されるんだろう。