テラーノベル
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弁護士事務所を後にした七星は、地図を頼りに優人が勤める大学病院へ向かった。
せっかく東京まで来たのだ。
ひと目だけでも優人に会いたい――その思いが七星の背中を押していた。
病院に着く頃には外来は閉まりかけていたが、七星は総合案内へ向かい、優人の知り合いだと告げて連絡を取ってもらえないかと頼んだ。
しばらくその場で待っていると、電話をかけた受付の女性が申し訳なさそうに言った。
「大変申し訳ございません。尾崎先生は現在手術中で、手が離せない状態です」
(やっぱり……)
七星は肩を落とし、女性に軽く会釈をして出口へ向かう。
そのとき、ちょうど麗華が通りかかった。
七星とすれ違った瞬間、麗華は「あっ」と目を見開き、すぐに声をかけてきた。
「尾崎先生の……お知り合いの方ですよね?」
「えっ?」
突然呼び止められ、七星は戸惑いながら振り返る。
そこには白衣を着た、美しい女医が立っていた。
「ああ、やっぱり。尾崎先生に会いにいらしたの?」
「はい。でも、今、手術中みたいなので……このまま帰ろうと思います」
七星が軽く頭を下げて歩き出そうとすると、麗華が慌てて呼び止めた。
「ちょっと待って!」
「え?」
「少しだけ、お話しできるかしら?」
「……は、はい」
優人の同僚と話す理由は分からなかったが、断るのも気が引けて七星は反射的に頷いてしまう。
麗華はそばの自動販売機でコーヒーを二つ買い、一つを七星に手渡した。
「すみません……」
「いいのよ。私もちょうど休憩しようと思ってたところなの。あ、あそこのベンチに座りましょう」
エントランスの木陰にあるベンチを指差しながら、麗華は七星を促した。
二人が並んで腰を下ろすと、麗華は缶コーヒーを開けながら言った。
「あなたの写真、以前、彼に見せてもらったわ」
優人が同僚に自分とのツーショット写真を見せていたと知り、七星は意外に思った。
「ふふっ、驚いた? 彼、言ってたわ。千葉の病院で妹みたいな知り合いができたって」
麗華は満面の笑みで言い放つ。
(妹……?)
七星の浮かない表情に気づいた麗華は、まるでそれを楽しむかのように、さらに笑みを深めて続けた。
「私ね、尾崎先生とお付き合いをすることになったの」
「えっ……?」
七星は驚き、手にした缶を開ける手が止まった。
白山小梅
「先生から聞いてないの?」
「……はい」
「まあ、そうよね。個人的なことだもの。他人にぺらぺら話すことじゃないし」
麗華は嬉しそうに微笑み、コーヒーを一口飲む。
一方の七星は、胸の奥がぎゅっと締めつけられていた。
「彼の亡くなった奥様のことはご存じかしら?」
「はい……」
「あなたとそっくりの奥様。残念ながらもうこの世にいないけど……。私ね、彼女と仲が良かったのよ。休日に一緒にショッピングに行ったり、お芝居を観に行ったり……本当に仲良しだったの。でね、彼女、亡くなる前に私にお願いしてきたのよ。“自分がいなくなったあと、彼をよろしく”ってね。きっと最愛の夫がひとりになるのを心配していたんでしょうね……だから親友の私に託そうと思ったみたい」
「…………」
七星は頭の中が真っ白になり、言葉が出なかった。
「彼、千葉に行った後、すっかり元気になって戻ってきたでしょう? で、帰ってきてすぐ、私に交際を申し込んでくれたの。彼から直接言われたら、もう断れなくって……。そういうわけなの」
衝撃で固まっている七星の顔を、麗華はにやりと眺め、さらに言葉を重ねた。
「ところで、あなたは彼にどんなご用だったのかしら?」
七星は混乱したまま、反射的に口を開いた。
「せ、先生が千葉にいたときお世話になったので、私用で東京に来たついでに、ご挨拶だけでもと思って……」
「あら、そう。じゃあ私から伝えておくわ。えっと……あなたのお名前は?」
「遠坂です」
「遠坂さんね。下のお名前は?」
「遠坂七星です」
「わかったわ。彼に伝えておくわね。じゃあ、私はこれで」
「あ、ごちそうさまでした……」
七星は慌てて立ち上がり、去っていく麗華の背中に深く頭を下げた。
そして、すぐに門の方へ歩き始める。
そのとき、ふと振り返った麗華は、肩を落として歩く七星の後ろ姿を可笑しそうに見つめ、口元をゆがめて笑った。
少し離れた場所から、二人の様子を眺めていた人物がいた。
優人の同期・伊藤宏太だ。
(驚いたなあ……。今の子、優人の亡くなった奥さんそっくりだ。水口女史の知り合いか?)
宏太は不思議そうな表情で立ち止まり、顎に手を当てた。
(いや、お高くとまった彼女に、若い女性の来客なんてあり得ない……。ってことは?)
眉間にしわを寄せながら、宏太はその場でじっと考え込んだ。
駅へ着いた七星は、千葉へ戻る電車が来るホームへ向かう。
電車を待ちながら、先ほどの衝撃的な会話が何度も頭の中でよみがえる。
(先生には……もう付き合っている人がいたんだ)
弁護士事務所での出来事を上書きしてしまうほど、その事実は七星の心を強く揺さぶった。
あまりの衝撃に、考える気力すら残っていない。
それでも七星は気力を振り絞り、震える手で携帯を取り出すと、優人へメッセージを打ち始めた。
【急に東京へ行くなんて言ってすみません。相談したいことがあったのですが、無事解決しました。帰りに大学病院へ寄ってみましたが、先生は手術中で会えませんでした。でも、これでよかったんだと思います。先生、どうかお幸せに】
打ち終えると、七星は迷うことなく送信ボタンを押した。
そして、優人のアドレスを携帯から削除する。
(新しい彼女がいるんだもの……私とやり取りなんてしてたら、誤解されて先生が迷惑しちゃう。だから、これで最後にしよう)
潤んだ瞳で携帯を見つめていると、電車がホームへ到着した。
七星は重い足取りのまま、車内へと乗り込んだ。
コメント
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うわぁーー💦💦最悪なパターン😱😣⚡️ 麗華の嘘八百に脳内洗脳されちゃった七星ちゃん🙀(゚o゚;; お前が勝手に優人先生や美奈子さんのことを語るなぁー💢😡 でも運良く伊藤くんが見てくれてたから必ず優人先生に話が行くはず‼️ 今度は手術終わってからすぐメール確認して連絡して、できればすぐに七星ちゃんの元に駆けつけてよ💨💨
なんてこと😢 早く真実を知って欲しい!
大嘘つきの冷血零下🧊❄️❄️❄️ 誰もこんな性格の悪い女と付き合わないよね…😱😱😱 伊藤先生、早く優人先生に伝えてあげて〜!!🙏