「よし、着いたぞー!」
学校のバスから降り立った大地が、潮風に向かって両手を広げる。
そこは“無人島サバイバル体験”と銘打たれた半日のアスレチック。海と森に囲まれ、冒険心をくすぐる光景だ。
先生が説明を終えると、班ごとに自由行動。
「じゃあ料理はオレが担当!」
と大地が真っ先に名乗りを上げる。
嫌な予感しかしない隼人は眉をひそめた。
大地が拾った貝を豪快に鍋へ。さらに謎の草をドサッ。
「これ絶対入れちゃダメなやつだろ!」
隼人がツッコミながら鍋を取り上げるが、大地は「野生のスパイス!」と笑顔全開。
鍋から立ちのぼる香りは、ある意味サバイバルそのものだった。
隼人は「焚き火は俺に任せろ」と手際よく火を起こす。
パチパチと燃え上がる炎に、周囲から歓声があがった。
「隼人くんカッコイイ!」
女子たちの黄色い声援に、隼人はちょっと照れながらも得意げ。
大地がじっと見て
「ヒーロー隼人、炎の王子だな!」
と拍手。
「お前のコメントが一番照れる!」
と隼人は顔を赤くした。
その横で柊は釣り糸を垂らし、あっという間に大きな魚をゲット。
「夕飯はこれで決まりだな」
無駄のない動きにクラスメイトから拍手が沸く。
「柊、漁師説」と大地が笑うと、柊は「悪くない」と涼しい顔。
一方、萌絵と涼は浜辺の岩に腰を下ろし、ひそひそ声。
「船で移動中の隼人大地、あれは完全に“遭難前夜”シチュ」
「船上BL、公式化決定だな」
二人は手帳を開き、何やら熱心にメモを取っている。
最後は全員で海辺ディナー。
柊の釣った魚を焼き、隼人が起こした焚き火で温まりながら、なぜか大地の“サバイバル鍋”にも挑戦。
「……意外と、食えるな」
「ほら見ろ! 自然の恵みとオレの感性!」
「感性って言うな!」
笑いが波音に混ざり、夏の夕暮れがゆっくりと落ちていった。
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