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そして次の週の金曜日、葉月は仕事を終えるとすぐに家に帰った。

そう、合コンは今日行われるのだ。


朝、航太郎の夕食用にカレーを作っておいたので、帰宅してからサラダだけをササッと作った。

そして身支度を始める。


合コンの場所は、辻堂にあるイタリアンレストランなので、カジュアルな服装でも大丈夫だろう。

葉月は生成りの麻のセーターとデニムのロングスカートに着替えると、手作りしたシェルの三連ネックレスとピアスを着けた。

そしてメイクを整えてから髪を軽くブラッシングする。

緩いウェーブがかかったライトブラウンの長い髪は、そのまま肩に下ろしていくことにした。



準備が終わると、葉月は二階にいる航太郎に向かって叫んだ。




「航ちゃん! お母さん行って来るからね」




その声を聞いた航太郎がドタバタと階段を降りて来た。



「なんだよ母ちゃん、せっかくの合コンなのにそれで行くの?」

「これで充分でしょう?」

「母ちゃんが本気出すともっとイケてるのに、勿体ないな―」



息子のダメ出しに、葉月は思わず笑いがこみ上げてくる。



「フフッ、頑張り過ぎて一人だけ浮いても恥ずかしいじゃない? だからこれでいいの。それに合コンて言ったって、おじさんおばさんのただの飲み会みたいなもんなんだからさ。あ、あとお夕飯にカレー作ってあるから、冷蔵庫のサラダと一緒に食べてね」

「おっ、今日はカレー? やった!」



航太郎は葉月のハワイアンココナッツカレーが大好きだった。



「じゃあ行って来るわね。遅くても十時までには帰るから。戸締りちゃんとしてね」

「わかった。じゃあ母ちゃん、健闘を祈る」



ピシッと敬礼する息子の姿を見て思わず葉月は吹き出す。

そして息子に手を振りながら玄関のドアを閉めた。



辻堂までは電車で向かった。

途中一度乗り換えてから、また電車に揺られる。



(帰りはタクシーで帰ろう)



そんな事を思っていると、あっという間に辻堂駅に着いた。



駅を出るとすぐ店に向かう。

店の場所は知っていたが、中に入るのは今日が始めてだ。

店の前に着くと、葉月はドアを開ける前に一度深呼吸をする。



(あー、なんか採用試験を受けに来たみたい……緊張するなー)



そう思いながらドアを開けて中に入った。

するとすぐに千尋の声が飛んで来る。



「あっ、葉月こっちこっち」



左手にある半個室の席から千尋が手を振っている。テーブルには他の四名も揃っている。

どうやら葉月が一番最後のようだ。



葉月は慌ててテーブルの傍まで行く。



「すみません、遅くなりました」



すると男性陣が次々と言った。



「大丈夫ですよ、僕達も今来たばかりですから」

「お仕事だったんでしょう? お疲れ様です」

「初めましてー! よろしくー!」



葉月は恐縮しながら千尋の隣に座った。その時、千尋の反対側に座っていた初対面の女性と目が合う。

女性は千尋の友達だろう。葉月は軽く会釈をした。



「とりあえずワインを頼んじゃったので、ワインで乾杯でもいいですか?」

「あ、はい」



すると男性の一人がグラスに白ワインを注いでくれた。



「じゃあ全員揃ったので乾杯しましょうか? えー、では、バツイチ男女の楽しい集いにカンパーイ!」

「「「カンパーイ」」」」



六人はグラスをカチンと合わせると、ワインを飲んだ。



「お料理はもうコースで頼んでありますので、飲み物がなくなったら自由に頼んでねー」

「「「はーい」」」

「では早速自己紹介といきますか。まずは男性陣からどうぞー」



そこで一番端の男性が話し始めた。



「えー、私は宮本工務店で働いております宮本真司(みやもとしんじ)と申します。あ、一応社長ね! 歳は47です。この中では一番上かな? もちろんバツイチです。どうぞよろしくお願いします」



そこでパチパチと拍手の音が響く。

宮本は名刺入れから名刺を出すと、葉月ともう一人の女性に渡した。



「よっ、社長!」

「社長、素敵っ!」



隣にいる男性二人が宮本を茶化す。


宮本は社長業をしているのに気取ったところが全くなく、とても愛想が良かった。

見た目はガッチリとした体格で、髪はこざっぱりとした短髪。

肌は真っ黒に焼けていて、おそらくサーフィンではなく仕事で日焼けしたと思われる。


その時葉月はピンときた。



(あの人が千尋の知り合いよね? フフッ、まさにどんぴしゃり千尋のタイプじゃない。なるほど、そういうことだったんだ)



葉月の頬が思わず緩む。



すると、今度は真ん中に座っている男性が葉月ともう一人の女性に名刺を渡した。

そして自己紹介を始める。



「こんばんは。私は千尋さんと同じ加納建築設計事務所に勤めている河内翔(かわちしょう)です。歳は41歳。趣味はサーフィン。サーフィンにのめり込みすぎて、嫁に逃げられたバツイチでーす」



その挨拶を聞いて、他の五人から笑いが漏れる。

河内は茶髪のサラサラヘアで細マッチョな体格。片耳にはピアスを着け、肌は真っ黒に日焼けしていた。

いかにもサーファーという雰囲気だ。



(うわ、チャラそう……)



葉月はすぐにそう思った。

湘南のサーファーは、自然を愛する純朴で真面目なタイプと、常に女性を追いかけ回しているチャラいタイプの両方いるが、どう見ても河内は後者だ。

幼い頃から海辺で育った葉月は、すぐに見分けられる。



(チャラいサーファーなんて無理無理)



葉月はそう思いながら女性二人の方を見ると、千尋の向こう側に座っている女性がうっとりと河内を見ていた。



(あ……そういう事…か……)



葉月は思わずクスッと笑う。



その時、葉月の目の前に座っている男性が女性三人に名刺を配った。

千尋も名刺を受け取っているということは、初対面なのだろう。



「僕は舟木優一郎(ふなきゆういちろう)と申します。歳は42。湘南エクステリアという会社で、店舗の外構なんかをデザインしています」



舟木の話し方はとてもソフトで知的な雰囲気が漂っていた。

最初の二人とは正反対だったので、葉月は「おや?」と思う。



(穏やかで知的な感じはいいわね……でも少し線が細いかなぁ?)



シルバーフレームの眼鏡をかけた舟木は、インテリジェンスな雰囲気が漂っている。

しかし体型は線が細くひょろりとした印象で色白だ。それに顔も葉月の好みとは正反対のしょうゆ顔だ。

ワイルドで逞しいタイプが好きな葉月の好みとはかけ離れていた。



(うーん……やっぱりそう簡単に運命の出逢いはないかー)



葉月は少しがっかりしながら、ワインを一口飲んだ。

恋人の条件 ~恋に懲りたシングルマザーですがなぜか急にモテ期がきました~

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