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休日の午前、駅前。
人の波を避けるように立っている隼人の隣に、大地が軽く手を振って駆け寄った。
「待ったか?」
「いや、今来たとこ」
そんな定番のやり取りをしながら、ふたりは並んで歩き出す。
向かったのはゲームセンターだった。
派手な音楽と電子音の渦の中、隼人がシューティングゲームを指差す。
「これ、勝負しようぜ」
「お、いいな。負けたらジュース奢りな」
軽口を叩き合いながらプレイが始まる。
だが、結果は――。
「っしゃあ!俺の勝ち!」
隼人がガッツポーズを決める。
大地は苦笑いしながら財布を開いた。
「はいはい、何がいい?」
「コーラ。……あと、なんか悔しそうで嬉しい」
隼人が少し照れたように笑う。
その表情に、大地の胸がわずかに熱を帯びた。
ゲームセンターを出て、並んでベンチに腰かける。
ジュースの缶を開ける音が重なった。
「なあ、大地」
「ん?」
「もし……柊が今日来たいって言ったら、おまえ呼んでた?」
唐突な問いに、大地は目を瞬かせる。
隼人は真剣な横顔を見せていた。
「……呼ばない」
「なんで?」
「これは、おまえと遊ぶ日だから」
静かな答えに、隼人は一瞬言葉を失い、それから視線を落とした。
赤くなった耳が、夕陽に照らされて小さく震えていた。