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翌週の昼休み。教室のざわめきの中、大地が涼と談笑しているのが隼人の目に入った。
――なんだよ。やけに楽しそうじゃん。
胸の奥に小さな棘が刺さる。
気づけば、隼人は立ち上がって二人の机の方へ歩いていた。
「おーい大地!昨日の宿題さ、おまえやった?」
「え、ああ……やったけど」
「じゃあ見せろよ。俺、答えあんま自信なくてさ」
わざとらしい理由をでっちあげて大地のノートを奪う。
涼が苦笑しながら言った。
「隼人って、普段あんま宿題気にしないよね」
「お、おう。たまには真面目にしねーと先生に目つけられるし!」
(しまった、言い訳が苦しい……!)
隼人は内心で頭を抱えつつ、必死にノートをめくる。
大地は不思議そうに首をかしげた。
「そんなこと言うのおまえ初めてじゃないか」
「……べ、別に、いいだろ!」
妙に語気が強くなり、余計に不自然さが増す。
涼はニヤリと笑い、大地を肘でつついた。
「なあ、大地。これ、ヤキモチじゃね?」
「は?!」
隼人の声が裏返った。
顔が熱くなるのを誤魔化すために、ノートをパタンと閉じて立ち上がる。
「ち、ちげーし!俺はただ宿題を――」
その瞬間、クラス中の視線が集まっていることに気づき、さらに狼狽える。
「……っ、なんだよ!見るな!」
結局、隼人の空回りだけが目立ち、昼休みの主役になってしまった。
大地は苦笑しながら、小声でぽつり。
「……そういうとこ、嫌いじゃないけどな」
耳の奥まで赤くなった隼人は、返す言葉もなく机に突っ伏した。