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51歳のシンデレラ

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51歳のシンデレラ

第60話 - 第60話

151

2024年08月12日

#大人の恋愛

#恋愛

#純愛

#第3回テノコン

#ハッピーエンド

#大人ロマンス

瑠璃マリコ

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瑠璃マリコ

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俊と雪子が4階でエスカレーターを降りて婦人服売り場のフロアを歩き始めた時声がした。

「雪子？」

二人が振り返ると、雪子の同期の北原加奈子がびっくりした顔をして立っていた。

「やっぱり雪子じゃない！　うわー久しぶりー連絡しようと思っていてつい間が空いちゃったけれど元気そうで良かった。あれ？　今日はどうしたの？」

「こちらこそ連絡しなくてごめんね。今日は婦人服売り場に用があって」

「えーっ？　だって本店はいつも避けていたのにどういう風の吹き回し？」

加奈子は驚きつつ隣にいる俊に気づいた。そして二人の繋いだ手を見る。

加奈子は何かを察したようでにっこりと笑った。

「あっ、こちらは一ノ瀬さん。私の同期の北原さん」

雪子は二人を引き合わせた。

「初めまして、一ノ瀬です」

俊は雪子から本店にいる同期の加奈子の事を聞いていたのですぐにわかったようだ。

俊に挨拶された加奈子は耳まで赤く染めて照れている。

「初めまして。雪子の同期の北原と申します」

加奈子はその後雪子に向かって言った。

「いつの間にこんな素敵な人を見つけたの？　今度じっくり話を聞かせてもらわないと」

「ごめんねー今度ゆっくりね。実は今日は新しくオープンしたセレクトショップへ用があって来たの」

「ああ、あのお店ね。だったらこっちよ」

加奈子は二人を案内してくれた。

「加奈子は今『友の会カウンター』にいるんでしょう？　今日はなんで婦人服売り場にいるの？」

「それがさぁ、インフルエンザで何人か休みが出ていてそれの応援なのよ」

「そうだったのね」

そこで加奈子が少し声を小さくして言った。

「セレクトショップの隣には笹倉さんの件で河合みなみと喧嘩した江崎っていう販売員がいるから！　向こうは雪子の事を知らないから特に問題ないだろうけれどどういう人か見てきたら？」

もちろんその会話は俊にも聞こえていた。

「うん、ありがとう」

「隣のショップには二人の販売員がいるけれど、黒い髪の方じゃなくて派手な明るい髪の人よ。全身派手だからすぐわかると思うよ」

そして三人が目的のセレクトショップへと着いた。

「ショップの方いないわねぇ。お昼休みかな？」

「実はこのショップの方と一ノ瀬さんはお知り合いなの。だから戻って来るまで待たせてもらうから大丈夫よ」

「そうだったのね」

そこで加奈子は俊に向かって言った。

「そろそろ戻られる思いますので申し訳ありませんがしばらくお待ちいただけますか？　中に椅子もございますので」

「ありがとうございます。では遠慮なく待たせてもらいます」

俊がニッコリ微笑むと加奈子はまたポーッと頬を赤く染めてから言った。

「じゃあね雪子、また連絡するから」

「うんわかった、ありがとう」

加奈子は二人に向かって丁寧に一礼をするとその場を後にした。

セレクトショップはとてもセンスの良い店構えだった。

そして中には品のある素敵な服が素敵にディスプレイされている。この階に並ぶセレクトショップの中では一番高級感に溢れている。おそらく値段も相当高いだろう。

そこで俊はスマホを取り出し元妻の麻美にメールを打ち始める。雪子はそれを慌てて阻止した。

「昼休みを邪魔したら悪いわ。お店番が1人だったらもっと可哀想。だから戻られるまで待っていましょうよ」

雪子がそう言ったので俊はスマホをポケットへしまった。

「まあそうだな。時間はたっぷりあるしね」

雪子は店主がいない間店の中を一回りしてみた。この店にある服はどれも素敵だった。

雪子がもしまだ外商部へ勤めていたら迷わずこの店の服を富裕層のご婦人方へ薦めるだろう。

さすが人気ファッション誌に毎月載るだけの事はある。

そんな超一流ショップの経営者が俊の元妻なのだ。雪子は改めて俊とは住む世界が違う事を認識する。

気づくと俊が服を手に取りながら見ている。雪子にはどれが似合うかと悩んでいるようだ。

二人があれこれと見ていると、突然隣のショップから煌びやかな女性店員がやって来た。

「何かお探しですか？」

女性の年の頃は40代半ばくらい。明るく染めた長い髪は店員にしては派手過ぎる巻き髪で彼女が身に着けている黒いシンプルな制服にはかなり不釣り合いな気がした。

化粧は化粧品売り場の販売員のように厚塗りで能面のようだ。そして身体中からキツイ香水の香りが漂っている。

販売員としてこれは香水のつけ過ぎではないだろうか？　以前デパートで働いていた雪子はそう思う。

こんなにキツイ香りだと商品の服に香りが移ってしまうだろう。

女性店員は雪子にではなく明らかに俊に対して満面の笑みを浮かべていた。