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来華
90
#mlmk
I am 壁 @自給自足
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#だてなべ
ゆー
4
コメント
1件
んー、今回は蒼真の内面が結構見えた回だったな。髪切った理由を悠生にだけチラッと見せて、紬には言うなって... あの「知らないままでいい」って台詞が胸に刺さったわ。兄弟だからこその距離感、あるよな。ラストの「もうやめてくれよ」も、誰に言ってるんだろうって気になる。続きが気になるエピソードだった🔥
放課後。
教室にはまだ何人か残っていた。
紬は鞄に荷物を詰めながら、窓の外を見る。
校庭では運動部が片づけをしている。
「紬」
悠生が後ろから声をかけた。
「帰る?」
「うん。蒼真待ってる」
「そっか」
悠生は少し考えるようにしてから、蒼真の席を見る。
「……まだ残ってるな」
「何かあったのかな」
「さあ」
悠生は答えた。
でも、その視線は蒼真から離れなかった。
教室の後ろ。
蒼真は一人で机の中を整理していた。
ノートを鞄に入れる。
筆箱を入れる。
最後に、昼間の紙を取り出す。
小さく折られた紙。
蒼真はそれを開かないまま、しばらく見つめていた。
「蒼真」
悠生が近づく。
蒼真はすぐに紙を鞄へしまった。
「何」
「帰らないの?」
「帰る」
「紬、待ってるぞ」
「分かってる」
蒼真が鞄を持つ。
悠生はその横顔を見る。
「髪」
「何」
「切った理由、本当に邪魔だったから?」
蒼真の手が止まった。
「……何だよ急に」
「いや」
悠生は笑った。
「昔から長かったじゃん」
「だから?」
「急に切ったから」
「気分」
「そう」
それ以上聞かなかった。
蒼真も何も言わない。
二人で教室を出る。
廊下には、まだ生徒が何人かいた。
蒼真は悠生の少し前を歩く。
「悠生」
「ん?」
「さっきの話」
「髪?」
「ああ」
蒼真は振り返らない。
「紬には言うなよ」
「何を?」
「俺が髪切った理由」
悠生は黙った。
「……分かった」
「ありがと」
蒼真はそれだけ言って歩き続けた。
昇降口。
紬が二人を見つける。
「遅い」
「ごめん」
蒼真が靴を履き替える。
悠生も隣で靴を履く。
「悠生も帰る?」
紬が聞く。
「今日はこっち」
悠生は蒼真を見る。
「蒼真と話したいことあるから」
「そっか」
紬は特に気にしなかった。
「じゃあ先帰ってる」
「うん」
蒼真が答える。
「また後で」
紬は一人で校門を出ていった。
二人きりになる。
悠生が口を開く。
「……最近さ」
「何」
「変な紙、届いてない?」
蒼真の表情が変わる。
ほんの一瞬。
「何のこと」
「昼に紬が拾ったやつ」
「……見たの?」
「見てない」
「じゃあ何で分かる」
「お前の顔」
蒼真は黙った。
悠生は続ける。
「去年もあっただろ」
「……」
「机に入ってたやつ」
蒼真は視線を落とす。
「覚えてる」
「最近、また?」
「違う」
「じゃあ何」
「……別に」
悠生はため息をついた。
「その『別に』、最近多いよ」
蒼真は返事をしなかった。
校舎を出る。
夕方の風が冷たい。
しばらく歩いてから、蒼真が言う。
「悠生」
「ん?」
「俺が何か言ったら」
「うん」
「紬には言わないで」
悠生は足を止める。
「それ、前にも言ったよな」
蒼真も止まる。
「……そうだっけ」
「言った」
「なら、今回も同じ」
悠生は蒼真を見る。
「何でそんなに紬に知られたくないの」
蒼真は答えない。
「紬、何も知らないぞ」
「だからだよ」
「……え?」
蒼真は少しだけ顔を上げる。
「知らないままでいい」
その声は、いつもの蒼真よりずっと小さかった。
「何も知らない方が、あいつは普通に俺と話せるから」
悠生は何も言えなくなる。
その夜。
紬は自分の部屋で、昼間のことを思い返していた。
蒼真が紙を見たときの顔。
あれは何だったんだろう。
気になる。
でも、聞くほどのことでもない気もする。
兄弟だからといって、全部知っているわけじゃない。
そう自分に言い聞かせる。
同じ頃。
蒼真は自室で、昼間の紙を机の上に置いていた。
まだ開いていない。
指先が紙の端に触れる。
開く。
そこに書かれていたものを見て、蒼真は目を伏せた。
紙を折り直す。
引き出しを開ける。
その奥へ入れる。
そして、しばらく動かなかった。
やがて小さく息を吐く。
「……もう、やめてくれよ」
誰に向けた言葉なのか。
蒼真自身にも分からなかった。