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蓮司の相談室2

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蓮司の相談室2

91 - 第91話 家の中で“味方”がいない

2026年01月28日

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相談室の椅子に、相談者はだらしなく腰を落とした。

鞄は床に置いたまま。上着も脱がない。


「今日、やけに静かだな」


蓮司が言う。

机に向かったまま、振り返りもしない。


「家が」


相談者はそれだけ言って、言葉を探す。


「誰かいた?」

「いたよ。全員」

「なるほど」


蓮司はそれ以上聞かない。


「でもさ」


相談者が続ける。


「話す相手、いないんだよね」

「ケンカ?」

「しない」

「無視?」

「それも違う」


相談者は天井を見る。


「存在してない感じ」


蓮司はペンを回すのをやめた。


「家で?」

「家で」

「学校より?」

「うん。学校のほうが、まだ役割ある」

「皮肉だな」


相談者は苦笑する。


「怒られもしないし、褒められもしない」

「成績は?」

「数字だけ見られる」

「途中は?」

「興味ない」


少し間が空く。


「家にさ」


相談者は指を組む。


「期待してたんだと思う」

「何を」

「安心。味方。弱っていい場所。話を聞いてもらえるとこ」


一息で言い切って、黙る。

蓮司はそれを否定しなかった。


「全部そろってる家も、ある」

「……あるんだ」

「ある。でも」


蓮司は少し考えてから続ける。


「最初から、その役割を持たない家もある」

「俺の家が?」

「可能性高い」


相談者は顔をしかめる。


「じゃあさ」

「うん」

「俺がダメだからじゃない?」

「違うとは言わない」

「え」

「でも原因じゃない」


相談者は黙る。


「仕様の問題」


蓮司は淡々と言う。


「そこで回復しようとすると、削れる」

「じゃあどうすればいい」

「切り替える」

「家を?」

「役割を」


蓮司はようやく相談者を見る。


「家は生活拠点。回復拠点じゃない」

「冷たくない?」

「期待し続けるほうが、よっぽど冷える」


相談者は小さく息を吐いた。


「俺さ」

「うん」

「家にいると、背景になる」

「家具寄り?」

「そう。それ」


蓮司は少し笑った。


「家具は悪くない」

「でも、喋らない」

「喋らなくていい場所も、必要だろ」

「……でも」

「?」

「味方、欲しかった」


蓮司はすぐには答えなかった。


「欲しいなら」

「うん」

「場所を分ける」

「ここ?」

「ここも」

「外も?」

「外も」


相談者は少し考えてから言う。


「じゃあ俺」

「うん」

「家で元気なフリ、しなくていい?」

「しなくていい」

「期待もしなくていい?」

「減らせ」

「ゼロじゃなく?」

「ゼロは難しい」


相談者は苦笑する。


「現実的だな」

「高校生だからな」


立ち上がり、相談者は鞄を持つ。


「ここ来るの、逃げだと思ってた」

「違う」

「じゃあ?」

「補給」


相談者は少しだけ、表情を緩めた。


「また来ていい?」

「背景にならないなら」

「ここでは?」

「ならない」


ドアが閉まる。

相談室は相変わらず静かだ。


でも、少なくともここでは

誰かが“いる”前提で、会話が続いていた。

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