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朝の教室。 大地が席に座ろうとした瞬間――
「ぎゃあっ!?」
椅子から飛び上がるように立ち上がった。
見れば、椅子の上には無数の画びょうがきらりと光っている。
「うわぁ……古典的ないじめだなぁ」
大地は感心したように椅子を覗き込み、次の瞬間――
「……おお! これは隼人の“とげとげ愛の椅子”だな!?」
「はぁ!?」
「ほら、“俺以外の奴と距離取れ”っていう独占欲! ツンデレ王子の愛の形!」
「バカか! ただのイタズラだ!」
クラスは爆笑の渦。
大地は堂々と胸を張り、画びょうを1個摘んで掲げた。
「じゃあこれは隼人からの“婚約リング”ってことで!」
「やめろぉぉ!」
授業中。
先生の目を盗んで、大地はこっそり画びょうを並べ始めた。
「……何してんだお前」
「ラブのメッセージをデコるの!」
机の上に画びょうで「LOVE」の文字が完成する。
先生に注意されても、大地は平然と笑った。
「先生! これ、隼人からの熱烈な愛の手紙なんで、没収しないでください!」
「……知らん!」
クラス中が笑い転げ、隼人は机に顔を伏せて真っ赤になっていた。
昼休み。
隼人が購買でパンを買って戻ってくると、大地が机の上に正座していた。
「何してんだよ」
「さっきのとげとげ椅子のお礼に、俺からも愛のプレゼント!」
そう言って、大地が差し出したのは――プリントを折って作った紙の王冠。
その表面には、画びょうがキラキラと刺さっている。
「これで隼人は正式に“俺の王子様”!」
「いや血出るだろ! そんなもんかぶれねぇよ!」
「え、俺と血の契約ってことでしょ?」
「やめろぉぉぉ!」
放課後。
机を片付けていた大地は、また小さな紙切れを発見した。
今日のメッセージは――「バカ王」。
「おお! 俺、隼人の王子様になった!」
「違う! “バカの王様”って意味だ!」
「でも“王”って書いてある以上、特別な称号だろ? やっぱり俺だけが隼人の特別なんだなぁ」
「……っ!」
隼人の顔がみるみる赤くなる。
その様子に、大地はにんまり笑った。
帰り道。
夕焼けの帰り道で、大地がふと口を開く。
「なぁ隼人」
「……何だよ」
「今日、俺ほんとに嬉しかった」
「画びょう仕掛けられてか!?」
「うん。だって“俺のこと独占したい”って意味だろ? 俺以外に座らせないようにって」
「ち、違……っ」
「ありがとな。俺、隼人にだけトゲトゲにされたい」
にこっと笑う大地に、隼人は思わず視線を逸らす。
耳まで真っ赤になり、しどろもどろに叫んだ。
「……バ、バカ野郎!」
夕日が二人を照らし、その日もまた“いじめとプロポーズ”が繰り広げられた。