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体育の時間。 更衣室で大地がロッカーを開けると――
「……あれ? 俺のジャージがない」
中はすっからかん。
代わりに入っていたのは、小さな紙切れ一枚。
『探してみろ、バーカ』
大地はそれを手に取ると、ぱっと顔を輝かせた。
「おおっ、隼人からの“宝探しラブレター”!」
「違ぇよ!」
更衣室の奥で着替えていた隼人が、すかさずツッコむ。
だが大地は聞いちゃいない。
「なるほどな……隼人は俺に“服なんかなくても、裸の心で向き合え”って言いたいんだ!」
「言ってねぇ!」
「わかった! じゃあ俺、裸で体育出るわ!」
「出るなーー!」
結局、ジャージが見つからず、体操服の上から制服のズボンという妙な格好で体育に参加した大地。
笛の音が鳴ると同時に、大声を張り上げる。
「今日の俺は隼人専用モデルだ! ファッションショーいきまーす!」
「バカやめろぉぉ!」
クラスは爆笑の渦。
隼人は顔を真っ赤にしながらボールを投げつけた。
「黙って走れ!」
「おっ、これは“愛のドッジボール”!? 隼人、俺に当てたい=俺を落としたいってことだな!」
「違う! ただの攻撃だ!」
「やっぱりプロポーズだぁぁぁ!」
昼休み。
まだジャージを見つけられない大地は、机に突っ伏して悩んでいた。
「……隼人に服を奪われるってことは、つまり“俺のこと全部さらけ出せ”ってことだよな」
「深読みすんな!」
「ほら、隼人って独占欲強いし? 俺の肌とか体とか、ぜーんぶ自分だけのものにしたいんだろ?」
「やめろぉぉ!」
耳まで真っ赤になった隼人は、慌てて窓の外を見た。
放課後。
帰り支度をしていると、ようやく大地のジャージが発見された。
教室の後ろのロッカーの上に、丁寧に畳んで置かれていたのだ。
「うわ、めっちゃきれいに畳んである……」
「……別に」
「これ、隼人だろ?」
「ち、違ぇよ!」
「いや、隼人って几帳面だし。俺の服をきれいに扱ってくれたってことは……俺のこと、大事に思ってくれてるってことだよな!」
「……っ!」
隼人は真っ赤になり、机をガンッと叩いた。
「勘違いすんなバカ!」
「ふふ、隼人、ほんとは優しいもんな」
「うるせぇ!」
帰り道。
夕焼けの中、ジャージを抱えた大地はにこにこ笑っていた。
「隼人、ありがとな」
「……何が」
「俺の服、大事にしてくれたこと」
「……っ」
「でも俺さ、服よりもっと大事なもん隼人に預けてもいいよ」
「な、何だよ」
「俺の心」
冗談めかしてそう言う大地に、隼人は耳まで真っ赤になって叫んだ。
「バ、バカ言うなぁぁぁぁ!」
その声は今日も校庭に響き渡り、“いじめとプロポーズ”の喜劇は続いていくのだった。