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昼休み。教室の隅では、大地が萌絵と涼に囲まれて爆笑していた。転校してきたばかりの大地は、あっという間に「いじられキャラ」としてクラスに馴染んでいたのだ。
「でさ、俺さ、昨日の宿題ノート丸ごと落としてさ! 犬に食われたかと思ったら机の下にあったんだよ!」
「何それ! ありえなーい!」
萌絵が腹を抱え、涼も
「いや、犬に食われるほうがレアだろ」
と呆れ笑いをする。
大地はさらに
「俺の人生はコントだ!」
と胸を張り、周囲もつられて笑っていた。
その光景を教室の後ろからじっと見ている影があった。隼人だ。
クラスの中心、皆から信頼も厚い彼が、なぜか妙にむすっとしている。
(なんだよ、あいつらと楽しそうに……俺といるときより笑ってんじゃねえか?)
胸の奥がざわつき、気づけば隼人は大地の席へと歩み寄っていた。
「おい大地!」
「ん? あ、隼人! どうした?」
「どうした、じゃねえ! ……そんな奴らとつるんでて楽しいのかよ」
唐突な問いかけに、大地は目を丸くした後、にっこり笑う。
「楽しいに決まってんだろ! だって二人とも面白いんだぜ?」
「は、はあ!?」
「隼人も混ざりたいの?」
「ばっ……! 誰が混ざりたいなんて言ったよ!」
顔を赤くして否定する隼人。
「じゃあなんで来たんだよ?」
「……お、お前バカだからよ、変なやつに騙されんじゃねーかと思って!」
「ぶはっ!」
大地は腹を抱えて笑い出した。
「心配性か! 俺、無敵のポジティブマンだぞ!?」
「ポジティブマンて何だよ! そんなの聞いたことねえ!」
「だから無敵なんだって! はっはっは!」
「……うるせえ!」
横で見ていた萌絵と涼が、顔を見合わせてニヤリと笑った。
「……これ、完全に嫉妬だよね」
「間違いないな。やっぱ隼人、大地のこと……」
涼が小声で囁く。
「腐展開、きたわ!」
萌絵はノートに何やら勢いよくペンを走らせていた。
一方で大地はまったく気づかず、「じゃあ隼人も仲間入りな!」と腕を引っ張って隣に座らせる。
隼人は抵抗しようとしたが、大地の笑顔を真正面から見た瞬間、言葉を失った。頬が熱くなり、思わず視線を逸らす。
「お、お前……ほんと調子狂うんだよ」
「ん? 何か言った?」
「なんでもねー!」
結局その日、隼人は大地の隣に座ったまま昼休みを過ごすことになった。大地は大はしゃぎ、萌絵と涼は実況モードでニヤニヤ、そして隼人だけがひとり赤面しながら空回り。
――嫉妬は否定すればするほど、周囲にバレバレになるのだった。