TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

天使のbreath

一覧ページ

「天使のbreath」のメインビジュアル

天使のbreath

第4話 - 第4話

242

2024年08月04日

#大人の恋愛

#大人ロマンス

#恋愛

#ハッピーエンド

#切ない

#第3回テノコン

瑠璃マリコ

シェアする

この作品はいかがでしたか？

242

瑠璃マリコ

プロフィール

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール

テラーノベルのスクリーンショット

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

ホーム

検索

通知

本棚

その日仕事を終えた綾子はクリーンルームを出てロッカーへ向かった。

ロッカーの前に行くと取っ手にスーパーのビニール袋が下がっていた。中には茄子が7～8本入っている。光江がくれたのだろう。綾子の頬がほんの少しだけ緩む。

着替えを済ませた綾子は袋を持って駐車場へ向かった。

綾子は半年前ここへ越して来た際に軽自動車を買った。東京にいた頃も運転をしていたので特に問題はなかった。

車に乗ってアクセルを踏んだ綾子は、途中スーパーへ寄る事にした。

せっかくいただいた新鮮な茄子は今夜パスタにしよう。トマトソースベースのパスタが食べたかった綾子は、ちょうどオリーブオイルが切れていた事に気付く。そして朝食用のパンやヨーグルトも買ってから家に向かった。

綾子は半年前から軽井沢にある管理別荘地内の別荘に住んでいた。

別荘は綾子の叔母・内野たまきのもので、綾子は叔母から無償で借りている。

「家賃はいらないけど代わりにしっかり管理してちょうだい」

叔母からはそう言われていたので、綾子は雑草が生い茂る季節には汗だくになりながら草刈りをしたりハーブガーデンの手入れをしたり庭仕事に勤しむ。そして庭だけでなく別荘の中も常に綺麗に保つよう心掛けていた。

別荘は2LDKのログハウスだ。

カウンターキッチンを備えた広いリビングダイニングの他に個室が二つある。屋根は片流れの大屋根で吹き抜けになっている為解放感に溢れている。広いリビングには薪ストーブもあった。

室内には木の香りが漂いまるで森の中にいるように癒される。

別荘に着いた綾子は荷物を持って家に入った。

この日の夜、綾子はいただいた茄子を使ってアラビアータ風のパスタを作って食べた。茄子は新鮮でとても美味しかった。

食後シャワーを浴びてから寝るまでの時間をのんびりリビングで寛ぐ。

綾子の夜の過ごし方は、もっぱらパソコンでネットサーフィンか読書がお決まりのスタイルだ。

リビングには大型サイズのテレビもあったが、綾子がテレビをつけるのは朝食の時にニュースや天気予報を見る時だけだ。

その時綾子は光江が言っていた言葉をふと思い出した。

（神楽坂仁が作ったドラマ？）

綾子が【神楽坂仁　ドラマ】と検索をかけてみるとすぐにドラマの公式ページがヒットした。

（あ、ちょうど今日の9時からやるんだ）

綾子は珍しく夜にテレビをつけてチャンネルをドラマに合わせた。ドラマは5分後に始まる。

綾子がテレビを見なくなった理由は、元夫の隼人がテレビによく出演しているからだった。

隼人は有名なドラマ脚本家なので、テレビ局に知り合いも多い為よくトーク番組などに呼ばれる。

甘いマスクにソフトな語り口のせいか女性ファンも多くテレビ局も視聴率稼ぎの為に起用したいのだろう。

綾子がテレビを見なくなったもう一つの理由は、あの日車の助手席に乗っていた女優の白鳥ほのか（しらとりほのか）もよくテレビで見かけるからだった。

白鳥ほのかは大人気の女優だ。年齢は30歳。デビューしたての頃は清純派女優として売り出されていたが、ここ最近は大人の色気を振りまく女優へと変貌を遂げている。

ほのかはドラマだけでなくCMやバラエティー番組でもしょっちゅう見かける。

綾子が関わりたくない人達がテレビに頻繁に出ているので、綾子は徐々にテレビを見なくなった。

隼人がほのかと不倫をしていた事実はあの日の事故で知った。

隼人は不倫を否定していたが、事故後弁護士によるアドバイスでその時の状況を色々調べているうちに二人の交際はすぐに明らかとなった。

元夫の隼人は愛人とのドライブに理人を連れて行った。いや、理人を利用したと言った方が正しいかもしれない。

人気急上昇中の女優と密会しているのが見つかった時の言い訳に息子を利用したのだ。

あの日三人が乗った車は対向車線の大型トラックに衝突した。事故原因は隼人のハンドル操作ミスだ。

あの事故で大型トラックの運転手は軽いけがで済み、隼人とほのかも奇跡的に骨折と打撲だけで済んだ。

しかし綾子の最愛の息子である理人だけが帰らぬ人となってしまった。

警察の調査によるとチャイルドシートのベルトがしっかりと締まっていなかったらしい。だから車が衝突した瞬間理人だけが車外に放り出され頭と全身を強く打って命を落としたのだ。

そこで綾子は意識的にフーッと深呼吸をした。気を緩めるとすぐに思い出してしまう。

綾子は意識を別の事に向けようとちょうど始まったドラマに集中した。