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体育倉庫裏の薄暗い空気が、俺の肌をざわつかせる。数人に囲まれて、手首を縄跳びでぐるぐるに縛られた。痛みはじわじわ、だけどそれより首の後ろに冷たい何かが押し付けられる。
「声出せよ」
「キモいやつの声、誰が聞きたいんだ?」
笑いながら奴らの指が俺の喉を軽く締める。呼吸が苦しくなる。ああ、もう息を吸うのも怖い。
誰かのスマホのシャッター音が耳に刺さって、俺は動けなくなる。こんな姿を笑われて、晒されて、何の意味があるんだ。
「おい、ほら顔赤いぞ。まるで死にかけの魚みてぇだ」
俺の心臓が喉まで跳ね上がる。首輪みたいに縄が締まって、頭がボーっとしてくる。
「助けてくれよ、誰か」なんて言葉はもう出ない。
口が震えて、涙がこぼれそうになった。けど、泣いたら負けだってわかってる。
「そんな弱音聞きたくねぇから、黙ってろ」
そんな言葉が自分の中で響く。
腕を引かれて無理やり起こされ、地面に膝をつかされる。
顔を上げると、奴らの冷たい目が笑っていた。
「もっと醜くなれよ。俺たちの“ペット”なんだからさ」
身体が震え、でも声は出せない。
俺はただ、壊れる音だけが頭の中で鳴り響くのを聞いていた。
膝をついたまま、俺の肩に泥が跳ねる。
誰かの足が、俺の背中を軽く踏みつける。
「ほら、反抗すんな。お前の居場所はここだ」
声は冷たくて、まるで命令のように響く。
息が浅くなっていくのを感じる。
でも、苦しいのは呼吸だけじゃない。
胸の奥が締め付けられて、どうしようもなく崩れていく感覚。
「お前なんか、生きてるだけでみんなの邪魔なんだよ」
「学校も家も、お前のせいで台無しになる」
身体を押さえつけられながら、言葉が頭の中でぐるぐる回る。
“汚い”“嫌い”“消えろ”
何度も何度も繰り返される。
「泣いてみろよ」
誰かがからかうように言う。
涙が自然に溢れそうになるけど、まだ止めていた。
泣くことすら許されない。
「お前は壊れて、そこにいるだけでいい」
冷たい言葉に、俺の意識が遠のく。
闇の中で、自分がどんどん小さく溶けていくのを感じながら、
俺はただ、耐えることしかできなかった。