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夢
316
午後の放課後、校庭の隅に残る小道を湊は歩いていた。 落ち葉を踏む感触に、幼い頃の足音が重なる。
陸と二人でかけまわった、あの秘密基地のある場所へ向かう。
角を曲がると、先に陸の姿があった。
黒いパーカーを深く被り、バイクにまたがる影。
目が合う瞬間、湊の胸がわずかに跳ねる。
陸はちらりとこちらを見たが、すぐに視線を逸らす。
――昔の笑顔はどこに行ったのだろう。
「……まだ、覚えてたんだ」
低い声。反射的に湊は体を止める。
陸は短く肩をすくめただけで、何も言わず前を向く。
沈黙が、かえって昔の距離を思い出させる。
湊は歩幅を合わせ、ゆっくり近づく。
「この道、覚えてるか?」
微かに笑みを浮かべ、落ち葉を蹴る。
陸はふっと肩の力を抜き、板に腰かけた。
「……覚えてるよ、うるさいルール作ってたよな」
その声は低いが、少しだけ柔らかさが含まれていた。
湊はベンチの隣に座る。膝に落ち葉が散る。
「なんでこんなところ、まだ残ってるんだろうな」
口に出すと、自然と笑みがこぼれた。
陸は視線を遠くの木々に落としたまま、短く息を吐く。
「……あの頃は、毎日が無駄に楽しかったな」
声には懐かしさと少しの痛みが混ざる。
湊はそれを見て、昔の自分と今の自分が、同じ時間軸に存在している奇妙さを感じた。
「……俺たち、あの頃みたいに、また無邪気に笑えるのかな」
湊は小さな声で呟く。
陸は視線を戻すことなく、ただ静かに肩をすくめる。
でも、微かに距離が縮まったことは、湊にも陸にも確かに感じられた。
夕日が二人の影を長く伸ばす。
「……また来るか」
陸の声は短く、無表情に近い。
「うん」
湊も短く応じる。互いに言葉少なでも、心は昔より少し近くにある。
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