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翌週の放課後。教室でノートをまとめていた隼人の前に、ひょこっと大地が顔を出した。
「隼人、今日さ……一緒に寄り道しね?」
「は?寄り道?」
「うん!駄菓子屋見つけたんだよ!オレ、まだあんま小銭の使い道わかんなくてさ。案内頼む!」
「……おまえ、ほんと勝手だよな」
「へへっ。褒め言葉ありがと!」
結局、また隼人は付き合わされる。
二人で商店街を歩いていると、大地は珍しそうにあれこれ覗き込んでいた。
「わ、これ安っ!ラムネ一個十円だって!」
「子どもかよ」
「いや隼人も食えよ。ほら!」
購入した袋を強引に開けて、一つを差し出してくる。
無邪気すぎて断る気をなくし、隼人はつい受け取ってしまう。
「な?うまいだろ!」
「……まぁ、悪くない」
「よっしゃ、隼人の笑顔ゲット!」
大げさにガッツポーズをする大地に、周囲の子どもたちが笑っている。
その輪の真ん中に自然といる彼を、隼人は横目で見つめていた。
(……なんでこんなに、誰にでも優しくできんだよ)
買い食いを終えて歩いていると、大地が急に立ち止まった。
「ん?」と視線を向けると、靴のひもが解けている。
「おっと危ねぇ」
大地はしゃがみこんで、結び直そうとする。
しかし不器用でなかなかうまくいかない。
「バカ、おまえ転ぶだろ」
そう言いながら、隼人が膝を折り、自分の手でさっと結んだ。
「ほら」
「あ、ありがと!隼人、器用だな~」
にこにこ笑う顔が近い。
自分を見上げるその視線に、隼人の心臓が一瞬止まりそうになる。
「……っ!」
慌てて立ち上がり、視線を逸らす。
「隼人?」
「……黙れ」
「えー!お礼にもう一個ラムネあげる!」
無邪気な声が耳に響き、隼人の胸はますます騒がしくなった。
(……気づきたくねぇ。なのに、気づいてしまう)
(俺……大地のこと、特別に見てる)
隼人はポケットに手を突っ込み、歩幅を速めた。
その背中を追いかけて、無防備に笑う大地が隣に並ぶ。
その笑顔から、目を逸らすことしかできなかった。
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