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「どうした」
蓮司は椅子を蹴って、少しだけ姿勢を崩す。
ちゃんと向くけど、正面すぎない。
「……別に、いじめられてるとかじゃないです」
相談者は先に予防線を張るみたいに言う。
「うん。そういう顔じゃない」
「普通に、みんなと話すし。
昼も一緒に食べるし。
笑ってもいるんですけど」
「けど?」
「……いなくなっても、困られない気がして」
蓮司は「ふーん」と短く息を出す。
「それ、“嫌われてる”とは別のしんどさだな」
「ですよね。
だから余計、文句も言えなくて」
「言いづらいわな。
何もされてないから」
少し間が空く。
「なあ」
蓮司が言う。
「それさ、“好かれたい”ってより
選ばれたいんじゃないか」
相談者が一瞬、黙る。
「……あ」
「声かけられるのは嬉しい。
でも“たまたま空いてた席”みたいなのが続くとさ」
蓮司は指で机を軽く叩く。
「自分が人間なのか、代替品なのかわからなくなる」
「……それです」
「安心できないんだよな。
いつでも入れ替え可能な感じ」
相談者は小さくうなずく。
「でさ」
蓮司は少しだけ笑う。
「それ、お前が薄いからじゃない」
「え」
「“合わせられる”から起きる」
「合わせられる?」
「誰とでもそれなりに話せる。
場を壊さない。
だから便利なんだよ」
言い切る。
「でも便利って、“選ばれる理由”にはなりにくい」
相談者は考え込む。
「じゃあ、どうすれば……」
「別に急にキャラ変えろとは言わない」
蓮司は肩をすくめる。
「ただな、
一人にだけ、ちょっとだけ本音出してみろ」
「一人……」
「全員に好かれようとすると、
全員にとって“どうでもいい存在”になりやすい」
少しだけ真剣な目になる。
「居場所ってな、
人数じゃなくて“濃度”だ」
「……」
「選ばれたいなら、
まず“選ぶ側”になれ」
相談者は小さく息を吐いた。
「それ、怖いですね」
「そりゃそうだ」
蓮司は笑う。
「でもな。
仮置きのままよりは、
失敗してズレた方が、あと残る」
少し間を置いて、最後に。
「今のお前、
ちゃんと存在してる。
ただまだ、“誰の記憶に置くか”を決めてないだけだ」
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