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相談者は椅子に座ってから、少しだけ間を置いた。
「一緒にいるのに、入ってない感じがするんですよね」
蓮司は視線を向ける。
「どの場面だ」
「休み時間とか、放課後とか、普通にみんなで話してる時」
「話には入ってる?」
「入ってるときもある」
少し言葉を選ぶ。
「でも、なんか……中心じゃないっていうか」
「中心になりたいのか」
「そこじゃない」
相談者は首を振る。
「ただ、“いてもいなくても変わらない”側にいる感じ」
沈黙。
「実際、どうだと思う」
「……分からない」
正直な答えだった。
「でも、たぶんそう」
蓮司は短く息を吐く。
「何でそう感じる」
「会話が続いてるときに、自分が何も言わなくても普通に進むから」
「当たり前だろ」
「分かってる」
少し強く言う。
「でも、自分が入ったときだけ一瞬止まる感じとかあると、余計に思う」
沈黙。
「あと」
相談者は続ける。
「話題が共有されてる感じがするんだよ」
「内輪のやつか」
「そう。“昨日のあれさ”みたいな」
「知らないやつ」
「うん」
蓮司は頷く。
「情報の層が違うな」
「層?」
「同じグループでも、共有してる範囲に差がある」
相談者は少し考える。
「じゃあ俺、浅い方か」
「そうなる」
沈黙。
「どうすればいい」
「二択だな」
蓮司が言う。
「何」
「そのままの位置でいいと割り切るか」
「もう一個は」
「踏み込むか」
相談者は眉を寄せる。
「踏み込むって」
「自分から関わり増やす」
「具体的に」
「二人で話す時間作るとか、共通の話題を増やすとか」
少し間。
「待ってると変わらない」
「だろうな」
相談者は苦笑する。
「でもさ」
「何」
「踏み込んで、もし拒否られたら」
#読み切り
#一次創作
「分かりやすくなる」
即答だった。
相談者は少し黙る。
「それ、怖いな」
「今は曖昧なだけだ」
沈黙。
「曖昧なまま外にいるか、はっきりさせるか」
相談者は視線を落とす。
「どっちも嫌だな」
「なら三つ目だ」
蓮司が言う。
「何」
「別の場所も作る」
相談者は顔を上げる。
「逃げ?」
「分散だ」
少し間。
「一つのグループに全部求めるな」
相談者はゆっくり息を吐く。
「なるほどな」
長めの沈黙。
相談者は立ち上がる。
「外にいる感じって」
「うん」
「完全に外じゃないのが一番面倒だな」
ドアの前で振り返る。
「入れてるけど、入れてない」
蓮司は短く言う。
「中途半端な位置だな」
グループの中にいても、距離には段階がある。
その位置を変えるか、受け入れるか、それとも別の場所を持つかで、感じ方は変わる。