テラーノベル
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人が集められた。
廊下でも、教室でもない。
見せるための場所。
誰が見ても、聞いてもいい場所。
「拒否したんだって?」
その一言で、空気が固まる。
ざわめきはすぐに期待に変わった。
「へえ」
「珍しく口利いたじゃん」
遥は中央に立たされる。
逃げ道はない。
でも、それは分かっている。
問題は、そこじゃない。
「なあ」
前に出てきた一人が、声を張る。
「お前さ、嫌だったんだよな?」
遥は、頷いた。
小さく、でもはっきり。
「……嫌だった」
ざわ、と笑いが走る。
「ほら、言った」
「じゃあさ、同意じゃなかったってこと?」
遥は息を吸う。
ここだ。
ここだけだ。
「……そう。同意してない」
声が震える。
でも、逃げなかった。
「俺は……受け入れてない」
一瞬、静かになる。
次の瞬間、拍手が起きた。
「うわ、理屈っぽ」
「必死じゃん」
「同意してない、だって」
「言葉覚えたの?」
誰かが言う。
「でもさ。拒否したんだよな? みんなの前で、空気止めて」
遥は、首を振る。
「止めたかったわけじゃない。ただ……」
「ただ?」
「何?」
遥は、言葉を探す。
(違う)
(俺は、殴り返したかったわけじゃない)
(壊したかったわけじゃない)
「……分かってほしかった」
声が、かすれる。
「嫌だって言うのは受け入れてないって意味で。それだけ」
一拍。
それが、致命的だった。
「聞いた?」
「“分かってほしかった”だって」
「お前が?」
「誰に?」
「分かってもらえる立場だと思ってんの?」
笑いが広がる。
「公開で拒否=挑発」
「ルールだろ」
「それにさ」
別の声。
「同意してないって主張するってことは、俺らが悪いって言ってるのと同じじゃん」
「それ、分かって言った?」
遥の喉が鳴る。
「……悪いって……言いたいわけじゃ……」
遮られる。
「言葉の問題じゃない」
「結果。拒否した、止めた、場を壊した」
「だから今、こうなってる」
誰かが、遥の背中を押す。
一歩、前に出される。
「公開処理な」
軽い声。
「拒否したやつがどうなるか。見せとかないと」
遥は、必死に顔を上げる。
「……俺は……」
声が掠れる。
「抵抗したからってそれでいいと思ってるわけじゃない。同意してないって……それだけは……」
言い切れなかった。
笑い声が、上から落ちてくる。
「聞いた聞いた」
「必死だな」
「でもさ」
一番、残酷な一言。
「拒否した時点でお前の気持ちはどうでもいい」
「ここでは“やったか”“やられたか”じゃない」
「“逆らったか”だけ」
遥の視界が、白くなる。
(違う)
(俺は……ちゃんと考えた)
(黙ってるのも違う)
(殴り返すのも違う)
(だから……言った)
それが、罪だった。
「はい、終了」
「これで分かっただろ」
「拒否しても何も守れないって」
遥は、俯いた。
(……でも)
(同意してないってことだけは)
(言わなかったら)
(俺が、俺じゃなくなる)
処刑は終わった。
でも、意味は消されなかった。
それが、唯一の救いであり、
次に壊される理由だった。
コメント
1件
うわあ……これ、読んでて胸がぎゅっと締め付けられました。「公開処理」って言葉が軽く出てくる空気がもう怖い。遥が「同意してない」って言えたこと自体が、この場ではもう逆らうことと同義で、気持ちより空気が優先されるって描写がリアルに残忍でした。最後の「意味は消されなかった」って一文、小さな抵抗の灯を残してるようで、次が怖いけど続きが気になります。
1,904
みるくちょこ🍫