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異世界へ飛ばされた僕が獣人彼氏に堕ちるまで

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異世界へ飛ばされた僕が獣人彼氏に堕ちるまで

53 - 【第五章】第8話 『好き』だからこそ、訊けない事もある

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2026年03月04日

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ルナールに横抱きで部屋へと運ばれ、柊也は今ベッドの上で横になっている。目の上には温かなタオルがのせてあり、優秀な猫獣人メイドの配慮により、既に部屋のテーブルに用意済みだった酔い止めの薬も飲んで、随分と体が楽になってきた所だ。


「明日には城へ出向かねばなりませんから、今夜はゆっくり二人きりで過ごしたいですね」


横になっている柊也の隣に座り、ルナールがしんみりとそう言いながらも、ちょっと不安げな顔をしている。

『柊也お義兄様、私とお茶会の続きをいたしましょう!』と言いながらセフィルが来やしないか、『俺の話を聞かねぇとぶっ殺すぞ!』と叫びながらアグリオスまで来たらどうしようとルナールは内心気が気じゃない。『空気』は敢えて読まないタイプっぽい二人の行動が何となく予測出来るので、柊也だけでなく、自分まで頭が痛くなりそうだ、とルナールは思った。

節目となる一日くらいはゆっくり——いや、いっそのこと廊下での行為の続きでも、個人的には最高かもしれない。当初の予定通り酒でも飲ませて記憶喪失確定になった柊也を美味しく頂きつつ過ごす夜は、きっとまた、最高の日の一つとなるだろう。

だがしかし、明日の事を思うときちんと休ませてあげたい気持ちも多少なりとも無いわけではないし……さて、どうしたものか。などと勝手にグダグダ考えているルナールの横で、柊也はちょっと暗い顔をしていた。


「明日には、お城か……」


『この世界へ残ってはくれませんか?』とルナールに切望されている事をお酒のせいですっかり忘れている柊也は、『ルナールは僕と離れ離れになっても、平気そうだな』と、切ない気持ちになっている。ルナールが卑猥な悪巧みをしているせいでちょっと頰が緩み、ぽすんぽすんと嬉しそうに尻尾でマットレスを叩いてしまっているので、柊也がそう勘違いしても無理はなかった。


「えぇ、【孕み子】との初対面ですね。『完全なる解呪』がもう目の前かもしれないのだと思うと、ちょっと不思議な気分です」


「……僕に、出来るかな」

「今のトウヤ様でしたら、きっと大丈夫ですよ」

【孕み子】を、今の状況から解放出来る可能性のあり得そうな方法をまだ知らないルナールは随分と楽観的だ。

「いざとなれば、もう一人の【純なる子】もおりますし。二人がかりでならば呪いも解けましょう」

「……呼び出しにその人が応じれば。の、話だよね」

何となく二人目の者とは会える気がせず、柊也が否定的な反応をしてしまう。もう一人が来られず、一層の事、解呪どころか、面談からして延期になってくれたりはしないだろうか?とも考えてしまった。


(そうしたら……もう少し、あと少しだけでも、傍に居られるのに)


自分の胸の内に積もった気持ちにやっと気が付いたばかりなせいで、どうしてもそんな考えが捨てきれない柊也はモヤモヤする胸元をギュッと強く掴んだ。


「そういえばさ、さっきの……襲ってきた人、何が目的だったんだろうね?僕の命を狙ってる事はもちろんだろうけどさ、何を目的として、僕を殺そうとしたのかが気になるなぁ」

「そうですね。今までは魔物を嗾けるだけでしたのに。まさか主犯がいきなり出てくるとは、私も予想外でした」

「主犯?それって確定なの?依頼された暗殺者とかじゃないのか。——あ、そういえば一部の者しか、此処には入れないって言ってたもんね。……王族の者じゃないと、簡単には入れないんだっけ?」

「そうです。外では、今までの様に魔物に攻撃させる事が出来ても、記録院内でとなると制限がかかって魔物を呼び出す数にも限界があるでしょうし、自らの手を汚す以外思いつかなかったのでしょうね」


「そうなると、おのずと犯人が絞られる訳か。……ん?待って。って事はさ、明日僕が王城に行くって、敵のアジトに向かうのと同義じゃないの?」


「そうなりますね。ですが……王族の全てが敵では無いと思います。少なくとも、国王と王妃は味方ですから。もし実際はそうではなかった場合でも、正々堂々正面から突破してくるタイプの方々ですので、今回の様なゴミみたいな策を仕掛ける事はありません」

「そうなると、別の血縁者か……」

「はい。三毛猫柄をした猫執事さんにはもう犯人の目星がついている感じでしたから、今回の件が大ごとになる事は無いでしょう」


「そっか。ねぇ、もしかしてルナールも、襲撃者が誰だったか気が付いてる感じなの?」

「 …………いいえ」


少し寂しげな顔をして、ルナールが短く答えた。 察しの良い者ならば明らかに嘘を付いているとわかる顔なのだが、目元にタオルがのっていて、声だけでの判断だった事もあってか、幸いにして柊也は嘘だと気が付かなかったみたいだ。

「……じゃあ、明日は気を引き締めてかからないとだね」

「そうかもしれませんね。ですが、セフィルからも報告がいくでしょうし、私としては、案外何事もなく終わる事を期待しています。城では手出し出来ないからこそ、記録院へ慌てて襲撃をかけてきたのでしょうし」

「あ、そっか。なるほど。王城だったら警備も此処以上に厳しいだろうしな。……ウネグさんも城に来てくれていそうだから、なんとかなるか」

ウネグは司祭であって戦士などではないのだが、柊也が何故かそんな事を言って安心しだした。


「はい。なのでここはもう、気持ちを切り替えて、今夜はお酒でも如何ですか?」


隠しきれぬ下心と欲望に塗れた言葉なせいか、語尾にハートがついている気がする。獣耳も大きな尻尾も期待に満ちていて呼吸も少し雑になっていた。

「お酒……?」

ルナールが何を期待しているのか、流石に柊也にもわかった。『置き土産』が欲しいのだと。どんな形であろうと自分を求めてくれる気持ちはとっても嬉しいし、触れ合う心地良さは何事にも変えられぬものがあるが、万全の体調ではない為か、なかなか口から『いいね、是非もらおうかな』と言葉が出てこない。

口を一度開けはしたが、柊也は声を発する事なくソッと閉じた。

「準備しましょうか」

柊也が「いや」と言いながら、咄嗟にルナールの服を掴んで立ち上がる動きを止めた。


「今夜はいいや」

「……では、お食事を用意してもらいましょうか?」


姿を見なくてもわかるほど、ルナールの声に力が無い。ガッカリしている事はあきらかだ。

「ごめん、今食べたら吐くと思うんだ。ちょーっと床の上を回り過ぎたからね」

「そう、ですね。わかりました……では、お風呂は——先程入りましたよね。えっと、それでしたら夜着のご用意を」

チョコレートに入っていたブランデーの様に、食事に少し混ぜてしまえば、もしかしたら……といった期待も打ち砕かれ、ルナールは襲撃を許してしまった時並みに凹んでいる。襲撃犯への怒りが混じっていない分ダメージはこちらの方が大きいのだから困った男だ。


「ありがとう……。えっと、なんかごめんね?」


色々と察してしまい、柊也が段々と後ろめたい気持ちになってきた。

体をゆっくりと起こし、目の上にのっているタオルを手に取って、柊也はベッドのヘッドボード側に枕を二個立てかけると、それに寄りかかった。ルナールはベッドから離れ、部屋の隅に置かれている鞄から二人分の夜着を取り出し、それを手に柊也の傍に戻って来た。

「もう起き上がって大丈夫なのですか?」

心配そうに声をかけながら、ルナールが柊也に夜着を手渡す。

「うん。座ってるぶんには」

「そうですか。お着替えを手伝いましょう」

着ている白いシャツのボタンに手をかけられ、柊也は咄嗟にそれを止める。このままでは絶対にまた変な気分になってくる!と確信があったからだ。


「自分で脱げるから!ね?」

「……はい」


ルナールのしょげた声が耳に痛い。だが、ここで流されては、また『置き土産』でしかない行為を甘んじて受け入れてしまう。いや、もしかしたら自ら求めてしまうかもしれない。


(……それも、いいかな。いやいや!最後の晩くらいはゆっくり話をしてすごしたいし!万全じゃない状態であんな激しい事をされたらどうなっちゃうのかとか、想像するのも怖いしっ)


——などと葛藤しながら、柊也がシャツのボタンを自分でゆっくりと外していった。

ベッドの上に座って、ただ着替えているだけなのに、心臓が段々と鼓動を早め始める。傍で立ちながらゆっくり着替えているルナールに、じっと見られている気がしてならないからだ。ルナールにその気は全くなくとも、視線を受け取る側からしてみれば、まるで視姦されているみたいな気分だった。


「ル、ルナール……あんまり見ないで欲しいんだけど……」


シャツを脱ぐ手を止めて、我慢仕切れなかった柊也が頰を染めながら言った。

「——え?あ、すみません!」

彼の着替えを見ていた自覚の無かったルナールが慌てて体ごと視線を逸らし、柊也に背中を向ける。誤魔化すように、ルナールは早く自分も着替えねばと思ったのか、そのまま上の服を勢いよく脱ぎ捨て、美しい裸体を柊也の前に惜しげもなく晒した。

服の下から現れた滑らかな肌、整った男らしい筋肉。一切の無駄が無い上半身は何度見ようがうっとりとしてしまい、まるで彫刻の様だと毎度思う。モデルや芸術品レベルの上半身に見惚れた柊也は自分の着替える手が止まっている事もすっかり忘れ、ルナールをじっと見詰めてしまっていた。そのせいで、今度はルナールが視姦されているような気分に。


「……あの、トウヤ様。着替えはしないのですか?」

「——はっ!そうだったね!」


互いに頰を染めながら、せっせと二人が着替えを再開する。

あぁーもう好きっ!と思っている相手がすぐ傍で着替えているというだけで変な気分になってくるもんなのか……としみじみ思いながら、柊也は出来るだけルナールの着替えは見ないよう努めたのだった。



なんとも微妙な空気が漂う中、二人は着替えを終えて服を片付けた。

そして ヘッドボードに立て掛けた枕に寄りかかり、脚を投げ出して寛ぐという定番の姿勢に柊也がなっている。だが今夜は久し振りに、ベッドと柊也の間にルナールが入り込んでいた。柊也の柔らかな髪に顎を軽くのせ、後ろからがっちり抱きつかれていて『寛ぐ』という言葉からは程遠い。この状態になってからかれこれもう三十分程度経過したのだが、柊也はドキドキし過ぎていて、当然の如く全然寛げてなどいなかった。


「——……あ、あのね、ルナール」


「はい、何でしょうかトウヤ様」

「そんなんで休めてる?寛げる?そもそも、僕の話……聞いてる?」

「はい。トウヤ様のお言葉は一言一句もらさず聞いておりますよ」

頭に頬ずりされながらそう言われても、信憑性はない。当然の権利だと言わんばかりに柊也の脚を尻尾がさわさわと撫で続けているし、背後には疑いようもなく男性の象徴的なモノが当たっているのだから当然だ。擦り付けたりはしてこないのだが、肌を寄せているだけでこうなってしまうものなのかと、人体の神秘を少しだけ柊也は感じた気がした。

でもまぁ、グダグダとこの三十分間どうでもいい話をしてきただけなので、聞いてもらえてなくても正直問題は無い。だけど、せっかく有耶無耶のままえっちな事だけをして終わりという空気は今のところ回避出来ているので、ずっと気になっていた事を言うにはもう今しかないなと柊也は思った。

「あのね、あのね……明日が最後かもしれないからさ……」

「最後?……まぁ、はい」

「えっと……—— 」


『ルナールは、僕が明日元の世界へ帰っても平気なの?』

『こっちの世界の僕を、僕の代用品みたいにする気だったりする?』

『僕の事はどう思ってる?』

『結果がどうなろうが、この世界からいなくなる僕からの好意なんか、きっと邪魔だよね』

『僕を帰す為に今まで旅に同行してくれていたんだもん。やっぱり、やっと解放される明日が楽しみ……なんだよね?ルナールは』

『僕がもし……ルナールの完全解呪望みを叶える為に何も出来なかったら、君は僕を軽蔑するんだろうか……』


言いたい事、訊きたい事は沢山あるのに、柊也の口から言葉が出てこない。陸に上がった魚みたいに口をぱくぱくさせて、結局は「——何だったっけな。忘れちゃったや」と言って誤魔化してしまった。


知りたいけど知りたく無い。恋は人を臆病にするなんて聞いた事があるけど、それって本当だなと柊也が苦笑した。


「……トウヤ様でも、その様な事があるのですね」

「いつかのルナールみたいだね」

そう言って軽く笑い合い、声が途切れた瞬間ルナールの抱き締める力が少し強くなった。

「今夜はもう休みましょうか」

「うん、そうだね」

ベッドの掛け布団をめくり、ルナールが互いの体にそっとかける。枕をずらしつつ布団に潜った柊也が、ふと思った今更な疑問を口にした。


「ところで、ルナールはいつもどこで寝てるの?この部屋みたいに二つある時はわかるけど、一つしかベッドが無かった事も多かったよね」


「いつもトウヤ様の隣で休んでいますが?」

「……え?」

「あぁ、いつもトウヤ様が寝ている間だけ寄り添っている感じでしたもんね。気が付かずとも無理は無かったかと」

そう言いながらルナールも柊也が横になっている布団に潜り込み、当然の様に柊也の首の下へと腕を差し込んだ。言っている事が嘘では無いとわかるほど、自然な動きだ。


「え、あ、無理!こ、これじゃ寝られないよっ」


口元を震わせ、柊也が林檎同然に顔を染める。

「では……ぐっすり眠れるようにしてあげましょうか?」

同じ枕に頭をのせている為、二人との距離はでゼロに近い。そんな至近距離で、ルナールに淫猥な笑みを浮かべられてしまい、柊也の頭が真っ白になる。


どうやら、二人ですごす最後となるかもしれない夜は、眠れぬ夜となりそうだ——

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