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コメント
1件
うわ、これ読んでるだけで手のひらがじんわり痛くなってきた……。“残す”って発想、怖いほどリアルだわ。言葉じゃなくて感覚で覚えさせるって、理屈抜きで効くよね。遥が「自分で手を置いてる」ところが特に刺さった。逃げ場がないのに、逃げないって選択してる。次は間違えない、って落ち着くラスト、めちゃくちゃ静かな闘志を感じた🔥
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雑談は戻っていた。
笑いもあるし、さっきのことを引きずっているようには見えない。
けれど、遥の周りだけが、わずかに密度が違う。
触れられていないだけで、終わっていない。
「なあ、ちょっと」
後ろから肩を叩かれる。
軽い音。
でも、その一回で十分だった。
遥は立つ。
指示はそれだけ。
教室の前、黒板の近く。
さっきと同じ位置に連れて行かれる。
誰も大きな声を出さない。
騒ぎにはしない。
ただ、席の向きが少しずつ変わる。
意識が集まる。
「さっきのやつさ」
誰かが言う。
説明はない。
全員分かっている。
「言い方とかじゃなくてさ、ああいうのって残らないじゃん」
軽く言う。
雑談みたいな調子で。
でも、そこに結論は含まれている。
「だから残すわ」
短い一言。
誰も否定しない。
遥は、何も聞き返さない。
聞き返す段階じゃない。
「ほら、手出せ」
前に立っているやつが、顎で示す。
理由は言われない。
でも、意味は分かる。
遥は、手を出す。
一瞬だけ遅れる。
その遅れで、空気がわずかに冷える。
すぐに伸ばす。
机の上に置かれる。
「動かすなよ」
その言い方は穏やかだった。
だから逆に、逆らえない。
次の瞬間、音が鳴る。
乾いた音。
定規か、硬い何かで打たれる。
一発。
強すぎない。
でも、軽くもない。
「分かる?」
聞かれる。
答えは待たない。
もう一発。
同じ場所。
同じ音。
同じ強さ。
「言葉だとさ、どうせすぐ戻るじゃん」
三発目。
少しだけ位置がずれる。
逃げようとしたわけじゃない。
それでも、ズレとして扱われる。
「そういうとこ」
今度は、少し強くなる。
反射的に指が動く。
すぐに押さえられる。
横から手が添えられて、逃げ場が消える。
「ほら、ちゃんと固定しろよ」
周りから声が飛ぶ。
笑いは混じらない。
作業の確認みたいなトーン。
遥は、手に力を入れる。
動かないように。
自分で押さえる。
その状態を見て、もう一発。
音が重なる。
さっきより、響く。
「いいじゃん、そのまま」
淡々と進む。
数を数えるやつはいない。
でも、終わりも決められていない。
「自分で止めるなよ」
言われる。
止める権利はない。
ただ受ける側。
また一発。
今度は間を空けない。
連続で来る。
同じ場所に重ねる。
痛みが広がる。
でも、それより先に理解が来る。
(足りてない)
まだ終わっていない。
「な、こういうの残るだろ」
言葉が、後から乗る。
「さっきの一言より、よっぽど覚える」
周りが小さく反応する。
肯定の空気。
遥は、手を引かない。
引けば、増える。
分かっている。
だから、そのまま置く。
自分で。
指先がわずかに震える。
それも抑える。
抑えきれない分だけが、残る。
さらに一発。
さっきより強い。
音が少し大きくなる。
「今、何でこうなってるか分かる?」
問いが来る。
手はそのまま。
逃がさない状態で。
遥は、息を整えて言う。
「……俺が、ズレたこと言ったから」
「それだけじゃねえだろ」
すぐに返る。
「流れ壊して、しかも修正しなかったからだろ」
補足が入る。
逃げ道を削る形で。
遥は、続ける。
「……周りに合わせなかったから」
「そう」
短い肯定。
それで、また一発。
今度は、間を置いて。
意図的に。
記憶に残すために。
数秒、止まる。
誰も動かない。
「もういいんじゃね」
誰かが言う。
判断が落ちる。
それで終わりになる。
手が離される。
遥は、すぐには引かない。
勝手に引くと、また何か言われる可能性がある。
一拍置いてから、ゆっくり戻す。
赤くなっているのが見える。
でも、見ない。
視線を上げない。
「次、同じことやったら分かってるよな」
軽く言われる。
脅しじゃない。
確認でもない。
“続きがある”という事実だけが置かれる。
遥は、小さくうなずく。
それで十分と判断される。
空気が解ける。
席が元に戻る。
会話が再開する。
何もなかったみたいに。
遥も席に戻る。
ノートを開く。
ペンを持つ。
少しだけ握りづらい。
でも、それは理由にならない。
(残った)
思考が、そこに落ちる。
さっきの言葉より、はっきりしている。
どこで間違えたか。
どうすればいいか。
全部、感覚で残る。
(次は間違えない)
その結論だけが、静かに固まる。