テラーノベル
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ドアを開けた瞬間、笑い声が止まった。
一拍。
それから、誰かが言う。
「来たじゃん」
軽い声。
でも、合図みたいに全員が動く。
席に着く前に、肩を押される。
強くない。
でも、避ける隙もない。
「逃げんの早くね?」
後ろから声。
振り返る前に、首を軽く叩かれる。
笑いが起きる。
席に座ると、机が引かれる。
前に。
体がつんのめる。
「ちゃんと座れよ」
言ったやつは笑ってる。
最初から、そのつもりだった顔で。
授業なんて、関係ない。
教師が入ってきても、空気は変わらない。
静かになるだけ。
でも止まらない。
足元で、何かが当たる。
ペン。
拾うと、すぐまた別のが飛んでくる。
今度は消しゴム。
次は丸めた紙。
「ナイスキャッチ」
笑い声。
遥が拾うたびに、投げる数が増える。
拾わせるためにやってる。
二限。
後ろから椅子を蹴られる。
さっきより強い。
「反応しろよ」
もう一回。
今度は、タイミングをずらして。
集中しようとした瞬間だけ狙ってくる。
「なあ」
耳元。
息がかかる距離。
「昨日どこ行ってた?」
答えない。
間。
頬を軽く叩かれる。
乾いた音。
「聞いてんだけど」
もう一回。
今度は少し強く。
「逃げたんだろ?」
笑いながら言う。
否定しても、意味はない。
答えても、同じ。
「ほら、喋れよ」
机を叩かれる。
音で、全員が一瞬こっちを見る。
でもすぐ戻る。
“日常の一部”みたいに。
三限。
立たされる。
教師が黒板を見ている隙。
「立てよ」
腕を引かれる。
逆らうと、もう少し強く引かれる。
立つしかない。
「昨日の分な」
腹を軽く殴られる。
一発。
様子を見る。
「こんなもん?」
もう一発。
今度はタイミングをずらして。
呼吸が整いかけた瞬間。
「ほら、耐えろよ」
周りが笑う。
順番にやるやつが出てくる。
強さはバラバラ。
でも、止まらない。
教師は気づかない。
いや、見ない。
昼。
机の上に弁当を置く。
すぐ、手が伸びる。
開けられる。
「うわ、まずそ」
笑いながら、箸でつつく。
ぐちゃぐちゃにする。
「食えよ」
押し返される。
そのまま。
食べるしかない。
見られながら。
「ちゃんと全部食え」
残そうとすると、机を叩かれる。
午後。
黒板に呼ばれる。
「遥、やってみろ」
後ろから声。
「できんの?」
チョークを持つ手が震える。
「手、震えてんじゃん」
笑い。
答えを書く。
合ってるかどうかなんて、関係ない。
戻るとき、足を引っかけられる。
転ぶ。
「危なっ」
笑い。
助けるやつはいない。
「ちゃんと歩けよ」
言ったやつが、さっき足を出してる。
放課後。
帰ろうとすると、呼ばれる。
「おい、ちょっと来いよ」
断れない。
囲まれる。
円ができる。
逃げ道がない。
「昨日さ、楽しかった?」
誰かが聞く。
答えない。
間。
腹に一発。
「質問してんだけど」
もう一発。
今度は横から。
順番。
遊びみたいに回る。
「こいつマジで無反応だな」
「壊れてんじゃね?」
笑い。
「じゃあさ」
一人が言う。
「どこまで耐えられるかやる?」
賛同の声。
誰も止めない。
止める理由がないから。
遥は立ってるだけ。
逃げられない。
逃げても、明日がある。
これは罰じゃない。
“遊び”だ。
逃げたことは、理由になる。
でも、理由がなくても続く。
だから終わらない。
コメント
1件
うわ……読み終わってしばらく息できなかった😭💔 「逃げたことは、理由になる。でも、理由がなくても続く。だから終わらない」この一文が刺さりすぎてる。 教室の空気、教師の無視、遊びみたいな暴力の連鎖…どれもリアルで胸がぎゅーってなったよ。 特に「ナイスキャッチ」のところ、拾わせるために投げてるって分かってるのに抗えない感じ、すごく伝わってきた。 遥くんの震える手、見て見ぬふりの周り…ruruhaさんの描く"日常の闇"がリアルすぎて目が離せなかった。 どうかどこかで光が差しますようにって祈る気持ちで次話待ってるね…🌸