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また、笑われた。
小学校のときも、こうだった。ランドセルの背中を押され、教室の床にひざまずかされた。同級生の笑い声が耳を貫いて、頬が熱くなる。あのときも、誰も助けてくれなかった。いや、助けられる存在じゃなかった。俺は、ただの標的だった。
今も変わらない。教室の隅、視線が集中する。何か間違えるたび、すぐに笑い声が返る。俺の存在が、遊びのネタになる。手足の震えが止まらないのに、笑い声にかき消される小さな声。
「……だめだ」
心の中で呟く。誰にも聞こえない。聞こえるわけがない。
義母の怒声、義姉の嘲笑、義兄の無言の圧迫。幼いころから染み付いた痛みが、今の俺を覆う。身体が縮こまり、呼吸が浅くなる。息を整えようとしても、心臓の音が頭の中で響き、震える手が止まらない。
昼休み、偶然廊下で聞いた声。俺を小馬鹿にするクラスメイトの本音。
「こいつ、ほんと気持ち悪い」
──耳に残る。それだけで、身体が痙攣するように縮こまる。俺は、存在してはいけないんだ。ここにいるだけで、迷惑で、笑われるためだけの存在。
教室の床を見下ろすと、幼いころ義母に殴られた痛み、義姉に蹴られた痛み、義兄に無理やり押さえつけられた羞恥が、全部蘇る。俺の全ては「間違い」で、誰も触れてほしくない部分ばかり。声を出したくても出せない。……小さな声も、すぐ嗤い声にかき消される。
俺は何をしても、何を考えても、全部無駄なんだ。誰かの遊びのために存在しているだけ。手を伸ばしても、体を動かしても、笑い声に押し潰されるだけ。冷たい視線が、息苦しいほどにまとわりつく。
布団に潜っても、痛みは消えない。小さな心臓の震え、全身の違和感、胸の締め付け。全部俺のせいだ。全部間違いだ。誰かのために存在する価値なんてない。ああ、俺は、俺は……存在してはいけないんだ。