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ドアが開く。
「……失礼します」
「どうぞ」
生徒は入ってきて座る。
カバンを置く動きが少し雑。
「なんか」
すぐに出る。
「やること多すぎて、何も進まないんです」
日下部は視線を向ける。
「課題とか、提出物とか」
「うん」
「あとテスト勉強とかも」
短く息を吐く。
「全部やらなきゃって分かってるのに」
手が止まる。
「結局、どれも中途半端で終わるというか」
視線が落ちる。
「で、締切近づいて一気に崩れる」
「詰まってるな」
日下部は言う。
生徒は小さく頷く。
「はい」
「優先順位の問題じゃない」
短く続ける。
「“同時に持ちすぎてる”」
生徒は黙る。
「……でも全部大事じゃないですか」
「全部大事だと、全部止まる」
即答。
「じゃあ、どうすればいいですか」
日下部は少しだけ間を置く。
「一個潰す」
生徒は止まる。
「え」
「終わらせるじゃなくて、“終わらせに行く対象を一個にする”」
短く言う。
「でも、他が気になります」
「気になる状態のままでいい」
はっきり言う。
「全部ちゃんとやろうとするから詰まる」
生徒は黙る。
「あと」
「はい」
「“途中までやったやつ”が一番重い」
日下部は言う。
「それが溜まってる」
生徒は少し顔を上げる。
「……あります」
「中途半端の在庫」
短く言う。
「それが頭の容量食ってる」
「じゃあ、それどうすればいいですか」
「切る」
即答。
生徒は固まる。
「え」
「全部やり直さなくていい」
「今からやる分だけ見る」
生徒は黙る。
「……もったいなくないですか」
「もったいないまま持つ方が損」
短く返る。
生徒はしばらく考える。
「……確かに、抱えすぎて何も進んでないです」
「それが一番詰む形」
生徒は立ち上がる。
ドアの前で止まる。
「全部ちゃんとやろうとしてました」
「それが一番崩れるやり方だ」
短く返る。
ドアが閉まる。
やることが多いとき、人は止まる。
原因は量じゃなくて、“同時に持つ数”。
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