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放課後の校舎は、普段のざわめきを失い、静寂に包まれていた。その中で放送室だけが、かすかに冷え切った空気を孕んでいる。
蓮司は、そこにいた。
扉を閉める音もなく、誰にも気づかれずに一人でいた。
そこへ、偶然にも遥が足を踏み入れた。
たった二人きりの空間。互いに言葉を発することなく、ただ静かに時が流れていく。
蓮司の目は、何かを探すように揺れていた。
冷たい笑みの裏に隠れた、狂気の欠片がちらついている。
「おまえ、嫌いなんだよ」
その言葉は静かながらも鋭く、遥の胸を深く刺した。
声には怒りも嘲笑も、感情の欠片すらなかった。
ただ無機質に、淡々と。
遥は一歩も動けず、ただ息を呑むだけだった。
その沈黙は、あまりにも重く、まるで身体の内部を圧迫するかのようだった。
蓮司は続ける。
言葉は少ない。少なければ少ないほど、彼の意図は鮮明になる。
「嫌いだ。おまえがいるだけで、うざったいんだ」
言葉の刃が、ゆっくりと切り込む。
それは暴力ではなく、精神を切り裂く静かな殺意だった。
遥の目に涙が浮かんだが、こぼれ落ちることはなかった。
痛みは身体の奥底からじわじわと広がり、息が苦しくなる。
蓮司は、その苦しみを嘲笑うように微笑んだ。
その微笑みは、嘘と本気が交錯し、誰にも解きほぐせない謎を孕んでいた。
二人の間に、言葉以外の重い空気が垂れ込める。
その空気は息苦しく、逃げ場のない檻のようだった。
やがて蓮司は、何も言わずにゆっくりと背を向けた。
遥はそのまま立ち尽くし、震える手で胸元を押さえた。
放課後の放送室に残されたのは、壊れそうな沈黙だけだった。