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頼る練習は、その日のうちに妙な形で広がった。
昼のしずくシェルターは、人も物も入り乱れていた。誰かが布を探し、誰かが許可書の写しをなくし、誰かが橋の床板用の釘の箱を持ったまま別の用事に呼ばれている。どこを見ても少しずつ足りていない。
サベリオはその様子を見回しながら、胸の奥で焦りが動くのを感じた。何が足りなくなるか、自分だけは知っている。だから走れば間に合うこともある。だが一人で走ったところで、見落とすものが多すぎるのも知っていた。
「町じゅう歩いて、抜けてるところを拾えばいいんじゃない?」
軽い声で言ったのはヌバーだった。どこから聞いていたのか、気づけばサベリオの横でリンゴをかじっている。
「橋、資料室、役場の前、川沿い、商店通り。どうせみんな別々に動いてるなら、つなぐ人がいたほうが早いでしょ」
ミゲロが腕を組む。
「配達ついでに見て回るならできるな」
ハルティナも乗ってきた。
「困ってる人に声をかけるの、私けっこう得意」
そこへリヌスまで顔を出した。
「伝言役もいるなら完璧だ」
四人の勢いに押され、サベリオは思わず笑った。前なら「危ないからやめよう」と言っていたかもしれない。だが今は違う。
「じゃあ、班を作ろう」
「名前どうする?」
ヌバーが食いつく。
「名前いる?」
「いる。名前があると人は急にやる気になる」
考える間もなく、ヌバーが指を鳴らした。
「歩き回って、話を拾って、足りないところを埋める。だからランブリング班」
「その言い方、何となく格好つけてない?」
ハルティナが笑う。
「格好は大事なんですけど」
こうして、ランブリング班ができた。
最初に向かったのは橋のたもとだった。ヴィタノフが資材の数を確認し、コスタチンが不足分を紙に書いている。サベリオは前の周回の記憶をそのまま口にしないよう気をつけながら、必要そうなものを一つずつ確かめた。
「細い縄、もう一本あったほうがいい」
「何でわかる」
コスタチンに聞かれ、サベリオは少しだけ迷う。
「去年、濡れた手で結び直して大変だったから」
嘘ではない。少しだけ、今までの周回の記憶を昔話のように混ぜる。
商店通りでは、モルリの屋台班が紙皿の在庫でもめていた。ハルティナが間に入り、ヌバーが足りない分を別の店から借りる交渉をし、ミゲロが荷車で運ぶ。リヌスはその流れをホレへ伝えに走った。
「何これ、便利」
モルリが感心したように言う。
「便利でしょ。誘ってるんですけど」
「その口癖、ほんと便利に使うね」
午後には資料室へ寄り、ロヴィーサから古い見取り図の写しを受け取った。川沿いではトゥランの誘導札が足りないとわかり、シェルター裏ではジャスパートが予備灯りの位置に悩んでいた。
歩けば歩くほど、町の準備は点ではなく線になって見えた。誰かの困りごとは、少し先の誰かの遅れにつながっている。逆に、一つつながれば三つ先まで楽になる。
夕方、石畳の坂を上がりながら、ミゲロが言った。
「お前、前より顔がましだ」
「釘に謝りそうじゃない?」
「今日は人にちゃんと頼んでる顔」
その言葉に、サベリオは空を見上げた。雲の切れ間が薄く光っている。前の周回では怖さしかなかった町の景色が、今日は少しだけ違って見えた。
ひとりで未来を背負うんじゃない。歩いて、つないで、足りないところを渡していく。
そのやり方なら、まだ間に合うかもしれない。
#成り上がり
#死に戻り
#ハッピーエンド
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