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ちゃちゃまある©️
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紙が配られる。一枚ずつ。
普通のプリントと同じ音。
机に置かれる。
前から順に回る。
「はいこれ」
誰かが遥の机にも置く。
軽く。
でも逃げ場はない。
上に書かれている。
『生活実態アンケート』
見たことある形。
学校のやつ。
下に小さく注意書き。
「正直に書いてください」
笑いが混ざる。
すぐ近くで。
「正直に、だって」
誰かが小さく読む。
からかうように。
周りは普通に話してる。
スマホを見ながら。
昨日のゲームの話。
動画の話。
声が重なる。
その中で、遥の紙だけ意味が違う。
「ちゃんと書けよ」
横から言われる。
「あとで見るから」
条件が足される。
教師は黒板に向かっている。
止めない。
それで成立する。
最初の質問。
『クラスで困っていることはありますか』
選択肢。
ある / ない
丸をつける欄。
遥のペンが止まる。
「どっち?」
すぐ来る。
覗かれている。
「早く」
急かされる。
遥は丸をつける。
『ない』
一番安全そうな方。
その瞬間、紙を軽く叩かれる。
「何も困ってないんだ」
笑い。
でも声が近い。
「じゃあ昨日のあれ何」
すぐ繋げられる。
逃げ道が消える。
遥は何も言えない。
「書き直せよ」
ペンを押し付けられる。
選び直し。
遥は消す。
『ある』に丸をつける。
「で?」
次が来る。
終わらない。
『ある場合、具体的に書いてください』
空欄。
広い。
逃げ場がない。
「書けよ」
短い。
遥はペンを動かす。
『少しうるさい』
書く。
一番弱い表現。
その瞬間、肩を叩かれる。
強く。
「誰が?」
即具体。
逃げを潰す。
「“うるさい”って誰」
詰められる。
遥は止まる。
「早く」
耳元で言われる。
近い。
遥は書き足す。
『クラスの人が』
曖昧。
すぐに線を引かれる。
横から。
勝手に。
「それ意味ねえだろ」
否定。
「名前書け」
条件が変わる。
逃げ場がなくなる。
遥は手を止める。
その瞬間、足を蹴られる。
机の下。
見えない位置。
「止まるなって」
低い声。
遥は書く。
『田中』
一人。
出す。
その瞬間、笑いが漏れる。
「へえ」
後ろで声。
「俺うるさいんだ」
軽い調子。
でも距離が近づく。
「理由も書けよ」
すぐ来る。
遥は書く。
『大きい声を出すから』
出す。
事実の形。
その瞬間、ペンを持つ手を押さえられる。
強く。
「それだけ?」
詰める。
「他は?」
増やされる。
終わらない。
遥は書き足す。
『叩くから』
出る。
一番分かりやすい。
その瞬間、机の下で強く蹴られる。
さっきより深い。
息が止まる。
「誰が叩くの?」
すぐ来る。
主語。
逃げ場が消える。
遥は書く。
『田中が』
確定。
逃げられない形。
「いいじゃん」
誰かが笑う。
「正直だな」
軽い。
でも空気が一段下がる。
次の質問。
『それはどのくらいの頻度ですか』
毎日 / 時々 / ほとんどない
選択。
遥は丸をつける。
『時々』
一瞬の判断。
その瞬間、後ろから首を押される。
机に顔が近づく。
「時々?」
低い声。
「昨日何回?」
具体をぶつけられる。
遥は口を開く。
「……何回か」
曖昧。
すぐに叩かれる。
後頭部。
「数えろよ」
即否定。
「書き直し」
遥は消す。
手が少し震える。
『毎日』
に丸をつける。
「それな」
笑い。
肯定。
でも終わらない。
次。
『それを誰かに相談しましたか』
空欄。
逃げ場がない。
遥は書く。
『していない』
一番安全そうな形。
その瞬間、紙を引っ張られる。
半分奪われる。
「何で?」
詰める。
「相談できない理由書けよ」
条件が増える。
遥は書き足す。
『迷惑をかけるから』
出る。
いつもの形。
その瞬間、笑いが少し強くなる。
「便利だなそれ」
誰かが言う。
「じゃあ今これも迷惑だな」
すぐ繋げられる。
逃げ道が消える。
「書けよ」
指で欄を叩かれる。
空いているスペース。
追加の欄みたいに。
遥は書く。
『自分が悪いから』
その言葉が出る。
迷いがない。
一番早く終わる形。
「それそれ」
笑い。
「ちゃんと分かってんじゃん」
軽い。
でも固定される。
赤ペンが出てくる。
誰かが丸をつける。
強く。
『自分が悪いから』
そこだけ囲まれる。
教師が振り返る。
一瞬。
紙と、その丸を見る。
何も言わない。
また黒板に向かう。
それで確定する。
正しい形になる。
「はい提出な」
誰かが言う。
手を出す。
回収。
普通のプリントみたいに。
でも違う。
何人かが先に見る。
笑いながら。
「これコピーしよ」
軽く言う。
冗談みたいに。
でも否定はない。
遥の手から紙が離れる。
戻らない。
机の上が空く。
でも終わらない。
「明日もあるから」
誰かが言う。
普通のトーンで。
後ろでは別の話で笑ってる。
関係ない話で。
その中で、書いた言葉だけが残る。
(自分が悪いから)
紙から離れても、頭の中には残る。
次に何を聞かれても、その言葉が先に出る。
コメント
1件
読んだよ…「生活実態アンケート」の紙一枚で、ここまで逃げ場をなくされていくの、見てるだけで息苦しかった。特に「自分が悪いから」って書かされて、しかも赤ペンで囲まれるところ、心臓がギュッてなった。教師が何も言わないのも、逆にリアルで怖い。ruruhaさんの、日常の“普通”を武器にした描き方、すごく刺さるよ…