テラーノベル
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教室は最初からうるさい。
笑い声が切れない。
教師はそれを止めない。
そのまま黒板に手をつく。
「はい、確認するぞ」
声だけ少し上げる。
静かにはならない。
でも全員が聞いてる。
「アンケート、“いじめはない”で一致してる」
言い切る。
余白を残さない。
「例外いないよな?」
問いかけの形。
でも答えは決まってる。
後ろから声。
「いねーよ」
笑い混じり。
「いたら困るわ」
別の声。
重なる。
教師は頷く。
「だな」
それで確定する。
「じゃあ」
視線が動く。
止まる。
「遥」
名前。
一発で空気が寄る。
逃げられない。
「お前も“ない”でいいな?」
確認。
でも選択じゃない。
後ろから声。
「ここで違うとか言うなよ」
笑い。
被さる。
遥は口を開く。
「……ないです」
出る。
短い。
教師はすぐ返す。
「はっきり言え」
間を潰す。
遥は言い直す。
「……ないです」
少しだけ大きく。
「聞こえねえな」
後ろから飛ぶ。
笑い。
教師は止めない。
「“ない”でいいんだな?」
もう一度。
重ねる。
逃げ道を消す。
「……はい」
出る。
教師が黒板を叩く。
「決まり」
一言で固定。
「でさ」
終わらない。
教師が続ける。
「じゃあ何で毎回そういう空気になる?」
原因を要求する。
矛盾を押しつける。
後ろで声。
「お前のせいだろ」
即答。
笑い。
教師はそれを拾う。
「そういう意見もあるな」
否定しない。
むしろ整える。
「どう思う?」
振られる。
逃げ場なし。
遥は詰まる。
「……」
沈黙。
すぐに被さる。
「黙るなよ」
低い声。
「自分の話だろ」
別の声。
遥は出す。
「……分からないです」
その瞬間、笑いが強くなる。
「分からない、だって」
誰かが繰り返す。
「都合いいな」
刺さる。
教師も止めない。
「分からないで済ませるのか?」
詰める。
逃がさない。
遥は言い直す。
「……自分の」
言葉が途切れる。
後ろから即座に補完される。
「“自分の何かが悪い”だろ?」
笑い。
誘導。
遥はそのまま続ける。
「……自分の何かが悪いから」
出る。
教師が頷く。
「曖昧だな」
即否定。
「“何か”って何だ?」
具体化を要求。
逃げ場を削る。
「言えよ」
後ろから声。
「全部って言えよ」
笑い。
遥は口を開く。
「……行動が」
出す。
一つ。
「どの行動?」
即返し。
「遅いとこ?」
「反応鈍いとこ?」
「空気読めないとこ?」
複数の声が重なる。
選択肢を押し付ける。
どれも否定。
遥は詰まる。
その間も止まらない。
「全部だろ」
誰かが言う。
まとめる。
笑い。
教師が拾う。
「全部、か」
一拍。
「じゃあそれでいいな?」
確定に変える。
逃げ道が消える。
遥は止まる。
でも止まれない。
「……はい」
出る。
小さい。
「聞こえねえ」
すぐ飛ぶ。
「はい」
言い直す。
教師が黒板に書く。
大きく。
“原因:本人(全部)”
教室が少しざわつく。
笑いが混ざる。
「分かりやす」
声。
軽い。
でも残る。
「じゃあ最後」
教師が言う。
終わりに見せる。
でも締めるだけ。
「これで“いじめはない”な」
確認。
結論。
「原因が本人なら、いじめじゃない」
言い切る。
逃げ場を完全に塞ぐ。
後ろで拍手が起きる。
遊び半分。
でも音になる。
広がる。
「はい終わり」
教師が言う。
軽い。
日常に戻す。
笑い声がまた広がる。
別の話題に移る。
すぐ。
何もなかったみたいに。
黒板だけ残る。
“本人(全部)”
消されるまで、そこにある。
コメント
1件
うわあ……これ、読んでて息が詰まったよ。教室の空気が重くて、声が重なって、逃げ場がどんどん消えていく感じがすごくリアルだった。教師が「止めない」っていうのが一番怖い。むしろ同調してる感じがして。あの“本人(全部)”って黒板に残るのが、ずっと心に刺さってる。遥の「……はい」が小さくて、それで全部決まっちゃうのが切なすぎる。言葉の暴力ってこうやって積み重なるんだなって思った。丁寧に描かれてて、読んでるこっちも苦しくなった。でも、ちゃんと受け止めたいって思える作品でした。