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体育館の空気が熱い。バスケットボールを追いかけて走るたび、足元から何かがせり上がってくる感覚に、呼吸が乱れる。
「あ……っ」
喉の奥で引っかかるような声が出る。
一歩踏み出すごとに、息が浅く、途切れ途切れになる。
「……っは、…ん……っ」
息を整えようとしても、胸の奥から勝手に漏れる。
視界の端で、誰かがこっちを見て笑っている。
耳の奥で、その笑い声がねっとりとこびりつく。
汗が背中をつたうたび、全身がきしむようにこわばる。
それでも動きを止められない。止まったら——その瞬間、全部見られてしまうから。
体育館の床が汗で滑る。走りながら、呼吸が乱れていくのが自分でもわかる。
心臓の鼓動とは別に、腹の奥をじわじわと揺らす感覚が、全身に広がっていく。
「……っ、あ……」
唇を噛んでも、声が漏れる。
誰かの視線がこちらに集まった。
「おい、今の何だよ?」
笑いが起きる。足が止まりそうになるのを必死でごまかし、ボールを追う。
でも、次の瞬間、肩を掴まれて後ろに引き倒された。
「うわ、マジで変な声出してるじゃん」
腰を小突かれ、反射的に短い息が喉を抜ける。
「んっ……」
その瞬間、爆発するような笑い声。
「なにそれ、気持ち悪っ」
「もっとやられたいんだろ?」
数人が寄ってきて、わざと脇腹や背中を突いてくる。
くすぐられる痛みと、奥からの波が重なって、もう耐えきれない。
「……っあ、や……っ」
声が震えるたび、笑いが膨らみ、誰かの手がまた俺の肩を押す。
逃げ場なんてどこにもなく、ただ体育館の真ん中で、俺は晒されていた。