テラーノベル
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教室の前に、無理やり立たされる。誰かが遥の背中を突き飛ばし、壁に当てた。
「動くな」
「逃げたら増えるぞ」
制服の袖を、乱暴に捲られる。
腕に残る、紫と黄土色の痣。
古いもの、新しいもの。
消えきらず、重なっている。
「……うわ」
「なにそれ」
女子の声が混じった。
「きも」
「汚っ」
誰かが、さらに反対側の袖も引き上げる。
「ほら、こっちも」
「左右で色違うのウケる」
笑い声。
「殴られ慣れてんじゃん」
「もう“仕様”だろ」
遥は、低く言う。
「やめ……見せんな……」
その声に、腹を蹴られた。
「黙れ」
「見せ物が喋るな」
今度は、シャツの裾を掴まれる。
「背中もいっとく?」
「女子にもちゃんと見せとけよ」
女子たちは、一歩も引かない。
むしろ、近づいてくる。
「うわ……」
「痣だらけ」
「普通じゃない」
誰かが、鼻を押さえる仕草をする。
「なんかさ、汚い」
「触ったら移りそう」
遥の喉から、声が漏れる。
「ごめん……」
その瞬間、背中を拳で殴られる。
「謝るな」
「“気持ち悪い”って認めたことになるだろ」
女子のひとりが、冷たく言う。
「ねぇ、なんでそんな身体なの?」
「家でも学校でも殴られてんの?」
「それとも、自分でやってんの?」
笑いが起きる。
「自傷じゃね?」
「構ってほしいタイプ」
遥は、首を振る。
「違う……」
太腿に蹴り。
「言い訳すんな」
「その身体が答えだろ」
女子たちが、口々に重ねる。
「普通の人、こんな痣ないよ?」
「ちゃんと生きてたらさ」
「見てて不快なんだけど」
誰かが言った。
「これさ、見せといた方がいいよな」
「“こいつは殴っていい”って」
その言葉で、空気が固まる。
納得が走る。
「確かに」
「サンドバッグ向き」
遥の視界が揺れる。
(……まただ)
(こうやって……理由ができる)
最後に、誰かが言った。
「服、直せよ」
「その身体、隠さないと迷惑だから」
遥は、震える手で袖を戻す。
でも、もう遅い。
見られた事実だけが残る。
痣も、傷も、
“殴っていい理由”として、全員の中に刻まれた。
(……終わった)
(次は、もっと堂々と殴られる)
女子の誰かが、吐き捨てる。
「ほんと、キモい」
それが、制裁の締めだった。
コメント
1件
うわ……読んでいて息が苦しくなりました。第20話、本当に重くて辛い回でしたね。特に「殴っていい理由」が“刻まれる”という表現が生々しくて、遥の絶望がひしひしと伝わってきました。身体の痣が可視化されることで、いじめの理由にされてしまう理不尽さ。女子も含めた「全員」が加害者になっていく空気の描き方が印象的でした。連載がどう続くのか、それでも遥に救いが訪れてほしいと願いながら次を待ちます。作者さん、胸を締め付けられるような話をありがとうございます。