テラーノベル
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教室に入った瞬間、空気が変わる。
「来た」
「うわ、マジで来た」
誰かがわざと大きな声で言う。
「臭くね?」
「痣の匂いとかあんの?」
笑いが走る。
遥は席に向かおうとするが、肩を強く掴まれて引き戻される。
「無視すんなって」
「聞こえてる?」
耳元で、低い声。
「気持ち悪いんだよ」
腹に拳が入る。
息が詰まり、声が出ない。
「反応うっす」
「もう壊れてんじゃね?」
別の方向から、太腿を蹴られる。
「立てよ」
「座る許可出してない」
悪口が止まらない。
「普通じゃない」
「人間じゃない」
「殴られるために生まれてきた顔」
女子の声も混ざる。
「視界に入ると不快」
「近寄らないで」
「空気汚れる」
誰かが笑いながら言う。
「なぁ、昨日の痣見た?」
「今日、増えてね?」
その一言で、背中を殴られる。
一発。
間を置かず、もう一発。
「増えてるなら問題ないだろ」
「耐久テストな」
遥が声を絞り出す。
「……やめて……ごめん……」
それが合図だった。
顔の横を平手で打たれる。
「謝るなって」
「気持ち悪い」
今度は、膝裏を蹴られて崩れ落ちる。
床に手をついた瞬間、背中を踏まれる。
「這うな、見苦しい」
周りが囃す。
「ほら、ちゃんと見ろよ」
「これが“普通じゃない”ってこと」
女子たちが、冷たく言う。
「存在が迷惑なんだよ」
「殴られて静かにしてれば?」
頭を足で押さえつけられる。
「ほら、黙った」
「学習したじゃん」
誰かが最後に言う。
「今日もサンドバッグ、ありがとな」
足が離れる。
遥は床に残される。
(……また、始まった)
(終わる理由が、どこにもない)
悪口は、もう“音”でしかなかった。
意味は全部同じ。
殴っていい。壊していい。お前は異物だ。
コメント
1件
読んだ……読んでしまった……。教室の空気が一瞬で変わるところ、文章なのに“音”が聞こえてくるみたいだった。「謝るなって」のところが特に刺さって、心臓がギュッてなった。遥が「音」としてしか悪口を受け取れなくなってる描写、あれがもう限界のサインなんだなって……。次の話も読むけど、ちょっと心の準備が必要かも。でもちゃんと読みます。