テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
放課後、隼人に付き添われて病院へ向かう大地。昨日よりも雲ひとつない空が、どこか心強い。
病室のドアを開けた瞬間――
「おっ、スター大地登場!」
ベッドの上で、両手を高く掲げて大歓迎するおばあちゃん。
点滴のチューブが揺れるのもおかまいなし。
「こらこら、ばあちゃん元気すぎ!」
大地は思わず吹き出し、隼人も目を丸くした。
「昨日はちょっと寝不足で倒れただけさ。
あんたたち、心配しすぎだよ。心臓はまだロックンロールだし!」
おばあちゃんはウィンクを飛ばす。
大地が「ロックンロールて」と突っ込むと、
「今夜は病院ライブでもするかい?」とギターを弾く真似までしてみせた。
隼人が思わず笑う。
「大地の元気の源、ここにあったんだな」
「でしょ? この底抜けパワーが俺のDNAっすよ!」
大地は誇らしげに胸を張る。
おばあちゃんはそんな二人をにこにこ見つめ、
「隼人くんだね。大地から話は聞いてるよ。
頼もしいお友だちで、おばあちゃん嬉しい」
と柔らかい声をかけた。
隼人は少し照れながらも、「いつも大地に助けられてます」と頭を下げる。
「ほら見て、大地。いい子じゃないか。
これからも仲良くしてやっておくれよ」
「もちろん! 隼人は俺の相棒ですから!」
病室に笑い声が響き、白いカーテンが風に揺れる。
まるでそこだけが昼のように明るくて、
隼人は心の奥がじんわり温かくなるのを感じていた。
おばあちゃんは、大地が持ってきた果物籠を覗き込むなり、
「バナナ! これで今日のビタミンは優勝だね!」と両手をあげた。
病室とは思えぬテンションに、隼人は思わず苦笑い。
「ばあちゃん、そんな元気ならもう退院していいんじゃね?」
大地が笑いながら椅子を引くと、
「お医者さんがね、“もうちょいおとなしく”って言うんだよ。
だけどね、大地が来てくれたら治りが三倍早くなるんだから!」
と満面の笑み。
「え、三倍!? じゃあ毎日来たら一週間でピンピンだな!」
「そのとーり! 隼人くんも一緒なら五倍よ!」
不意に振られた隼人が「え、俺も?」と戸惑うと、
「若いエネルギーは薬より効くのさ」とウィンク。
大地はおばあちゃんの手を握って、
「ばあちゃんが一番エネルギッシュだけどね」と肩をすくめる。
おばあちゃんはさらに笑い、
「家で一人でつっこみ相手がいなくて退屈だったんだよ。
大地のアホパワー、やっぱ最高だわ」
「アホパワー言うな!」
大地の大声に、隣のベッドからクスクス笑いが漏れる。
隼人まで肩を震わせ、
「確かに大地、アホ元気だよな」と追い打ち。
「おい隼人まで!」
大地が半分本気で抗議すると、おばあちゃんがにやり。
「大地、アホは褒め言葉。愛されキャラってことさ」
ふと、隼人は思った。
この明るさは、きっとおばあちゃん譲り。
家族の温もりは二人で十分にあった。
そして、自分もその輪の中に招かれていることが、
どうしようもなく嬉しい。
「ばあちゃん、次は俺が笑わせます」
隼人がそう言って変顔をすると、
大地とおばあちゃんが同時に吹き出した。
病室はますます賑やかで、
夕方の光がカーテン越しに金色に輝いていた。