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放課後、隼人に付き添われて病院へ向かう大地。昨日よりも雲ひとつない空が、どこか心強い。


病室のドアを開けた瞬間――


「おっ、スター大地登場!」


ベッドの上で、両手を高く掲げて大歓迎するおばあちゃん。

点滴のチューブが揺れるのもおかまいなし。


「こらこら、ばあちゃん元気すぎ!」


大地は思わず吹き出し、隼人も目を丸くした。


「昨日はちょっと寝不足で倒れただけさ。

あんたたち、心配しすぎだよ。心臓はまだロックンロールだし!」


おばあちゃんはウィンクを飛ばす。

大地が「ロックンロールて」と突っ込むと、

「今夜は病院ライブでもするかい?」とギターを弾く真似までしてみせた。


隼人が思わず笑う。


「大地の元気の源、ここにあったんだな」


「でしょ? この底抜けパワーが俺のDNAっすよ!」


大地は誇らしげに胸を張る。


おばあちゃんはそんな二人をにこにこ見つめ、


「隼人くんだね。大地から話は聞いてるよ。

頼もしいお友だちで、おばあちゃん嬉しい」


と柔らかい声をかけた。

隼人は少し照れながらも、「いつも大地に助けられてます」と頭を下げる。


「ほら見て、大地。いい子じゃないか。

これからも仲良くしてやっておくれよ」


「もちろん! 隼人は俺の相棒ですから!」


病室に笑い声が響き、白いカーテンが風に揺れる。

まるでそこだけが昼のように明るくて、

隼人は心の奥がじんわり温かくなるのを感じていた。



おばあちゃんは、大地が持ってきた果物籠を覗き込むなり、

「バナナ! これで今日のビタミンは優勝だね!」と両手をあげた。

病室とは思えぬテンションに、隼人は思わず苦笑い。


「ばあちゃん、そんな元気ならもう退院していいんじゃね?」


大地が笑いながら椅子を引くと、


「お医者さんがね、“もうちょいおとなしく”って言うんだよ。

だけどね、大地が来てくれたら治りが三倍早くなるんだから!」


と満面の笑み。


「え、三倍!? じゃあ毎日来たら一週間でピンピンだな!」


「そのとーり! 隼人くんも一緒なら五倍よ!」


不意に振られた隼人が「え、俺も?」と戸惑うと、

「若いエネルギーは薬より効くのさ」とウィンク。


大地はおばあちゃんの手を握って、

「ばあちゃんが一番エネルギッシュだけどね」と肩をすくめる。

おばあちゃんはさらに笑い、


「家で一人でつっこみ相手がいなくて退屈だったんだよ。

大地のアホパワー、やっぱ最高だわ」


「アホパワー言うな!」


大地の大声に、隣のベッドからクスクス笑いが漏れる。

隼人まで肩を震わせ、

「確かに大地、アホ元気だよな」と追い打ち。


「おい隼人まで!」


大地が半分本気で抗議すると、おばあちゃんがにやり。


「大地、アホは褒め言葉。愛されキャラってことさ」


ふと、隼人は思った。

この明るさは、きっとおばあちゃん譲り。

家族の温もりは二人で十分にあった。

そして、自分もその輪の中に招かれていることが、

どうしようもなく嬉しい。


「ばあちゃん、次は俺が笑わせます」


隼人がそう言って変顔をすると、

大地とおばあちゃんが同時に吹き出した。

病室はますます賑やかで、

夕方の光がカーテン越しに金色に輝いていた。


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