テラーノベル
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「なあ……終わりじゃねぇだろ?」
笑い声とともに、机を叩く音。遥は突っ伏したまま、首を横に振る。
「……もう、無理だ……やめろ……」
「は? 何言ってんの。最後までやんなきゃ意味ねえだろ。ほら、“ちゃんとイくまで”だ。お前の意思でな?」
彼らはあくまで“強制していない”体裁を守る。だが、逃げ場はなかった。
「やらなきゃ……どうなるか、わかってんだろ? 日下部のこと」
その名を出された瞬間、遥の手は再び動き始める。震える指先が自分の身体をなぞり、荒い呼吸が漏れる。
「っ……は……っ……」
空気を切るような吐息に、教室の一角から笑いが上がった。
「おいおい、聞こえるじゃねえか。やっぱ慣れてんだな」
「喘ぎ声もっと出せよ。隠すなって」
遥は唇を噛みしめるが、堪えきれず小さな声が漏れる。
「……っ、あ……っ……やめ……」
「違うだろ? やめろじゃなくて、“もっと”だろ?」
「そうだそうだ。ほら、声張れよ。“気持ちいいです”って聞こえねえぞ」
嘲笑と罵声が交錯する中、遥の呼吸はどんどん乱れていく。拒絶しているはずなのに、身体は勝手に反応してしまう。
「……や……だ……のに……っ……」
「ほら、聞いたか? “いやなのに気持ちいい”だってさ!」
「最高にお似合いじゃん。裏切らねえよな、日下部のためにな」
涙で視界が滲む。机の表面にしずくが落ち、静かに広がった。
「……もう、……だめ……っ……」
背中が震え、声が掠れる。
「おーい、来そうじゃねえ? ほら、最後まで見せろよ」
「いけ、いけ。終わんねえぞ?」
遥は嗚咽混じりの声を押し殺しながら、とうとう境界を越えてしまう。
「……っ、あ、あああっ……っ……!」
一瞬の静寂。
その直後、爆笑と拍手が響き渡った。
「お疲れさまー! いやー、見事だわ」
「やっぱ意思が強いと違うね。ちゃんと最後までやりきった!」
「偉い偉い。これなら“無理やりじゃない”よな」
遥は机に顔を押しつけたまま、呼吸を整えようと必死だった。汗と涙でぐしゃぐしゃになり、喉が焼けるように痛む。
「じゃ、次は何やらせよっかな。“二人で”ってのも捨てがたいよな」
「いいね。日下部と並んで喘がせたら最高じゃね?」
その言葉が耳に突き刺さり、遥の胃がねじれるように縮んだ。
「……やめろ……っ……それだけは……」
だがその必死の拒絶すら、ただの余興にしかならなかった。
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