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抜け殻だったエンジェルにGodのbreathがかかる度、少しずつ魂が吹き込まれていく様子がとても繊細に伝わります☆ だから『天使のbreath』なのね… Godが言っていた様に、子供がママを心配して引き寄せたんだね!
いいえ 綾子さん、理人くんはきっと ママの笑顔を待っていたと思うよ👼💓 そして、綾子さんへの恋心を自覚した仁さん💖✨ 理人くんの事故の真相、綾子さんが離婚に至った衝撃的な理由を知った時、 彼はいったい どんな反応を見せるのだろう....⁉️
イケオジ❤️🔥仁さんが『ベルギーチョコパフェ』をじっと見つめていた姿が🤣🤣🤣…仁さんなら綾子さんの全てを優しく包んでくれるよ✨きっと💖
その後綾子は別荘に戻る道を運転しながら興奮に包まれていた。
(まさか道の駅で神楽坂仁に会うなんて……びっくりだわ!)
この興奮を誰かに伝えたくてしょうがない。
伝えるなら『God』しかいない、そう思った綾子は真っ直ぐ別荘に戻った。
リビングに入ると買い物した食材をキッチンカウンターの上に放置したままスマホに向かう。
【お疲れ様です。重大ニュースです。お蕎麦屋さんで有名人に会いました。さーて誰でしょうか?】
『God』にすぐ報告しようと思っていた綾子はいたずら心がムクムクと湧いてきてクイズ形式のメッセージを送った。
しかし『God』は打ち合わせ中だろうからすぐに返事は来ないだろう。
綾子はすぐに『God』とやり取りが出来ない状況にソワソワしつつ放置していた食材を冷蔵庫へ入れ始めた。
その頃別荘に戻っていた仁は仕事関係の電話を受けていた。
「はい、はい、わかりました、では来週伺います。では失礼します」
電話を切った仁はすぐにメッセージが届いている事に気付く。
(『エンジェル』…いや綾子ちゃんからか? でも俺は今打ち合わせ中の身だからすぐに返事は返せねーなー)
メッセージを見てしまうと返信したくなるのはわかっていたので仁はじっと我慢をする。
(ドラマ原作をあと5ページ書いたらメッセージを見ていい事にしよう)
仁はあえて条件を課し執筆を始めた。
しかしメッセージが気になって集中出来ない。それは無理もなかった。なぜなら仁は『ナマエンジェル』に会ったばかりだからだ。
夢にまで見た『エンジェル』と漸く初めて接触した仁はどうにも胸の高鳴りを抑える事が出来なかった。
(俺は45にして初めて恋に堕ちてしまった。あー何という事だ!)
つい『ロミオとジュリエット』のように大袈裟に嘆いてみたが、自分の姿があまりにも滑稽で思わず笑いがこみ上げてくる。
しかし次の瞬間頭を仕事モードに切り替えると執筆作業に集中した。
綾子に会ってからどんどんイメージが湧いてくる。筆が乗りに乗って止まらない。結局仁は短時間で10ページを一気に書き上げてしまった。
(この分ながら結構早く仕上がりそうだな)
これも全て綾子のお陰だ。日常生活でのトキメキは仁の緩み切った創作意欲に多大な刺激を与えてくれるのだ。
今ならもの凄いラブストーリーが書ける……仁はそんな気がした。
「よーし、頑張ったご褒美にメッセージを見るぞー」
そう呟くと仁は漸く綾子からのメッセージに目を通した。
【お疲れ様です。重大ニュースです! お蕎麦屋さんで有名人に会いました。さーて誰でしょう?】
クイズ形式のメッセージに仁は微笑む。
(クイズ形式と来たかぁ。ここでダイレクトに神楽坂仁って言ったらバレちまうしなぁ。うーん、なんと答えるかな?)
そこで仁は考える。そして咄嗟に思いついた事を書いた。
【軽井沢で凄い人って言ったら皇室関係のお方でしょ?】
【そうだったら凄いけれど違いまーす】
【うーん、だったら芸能人?】
【芸能人じゃないかも。でも有名人です。テレビにもたまに出る人!】
【少しヒントをくれー】
【いーですよー、何でも聞いて下さい】
【男? 女?】
【男性です】
そこから仁は調子に乗る。
【イケメン?】
【うーん、まあイケメンかなぁ?】
(『まあイケメン』ってどーゆう事だ?)
納得のいかない仁はもう一度聞く。
【『まあ』ってどいういう意味?】
【アイドル系じゃないって事ですよ、私よりも年上の方なので】
(なんだ、そーいう意味か)
仁は少しホッとする。
【じゃあイケオジって事か?】
【あ、そうですね】
【その人は君のタイプ?】
【? それって関係あります?】
【一応聞いておこうかなーと思って】
【フフフ、そんな事考えた事もないです】
【なんだ、じゃあタイプじゃないのか】
【いえそういう意味じゃないですけど……】
「じゃあどういう意味なんだよ…」
思わず仁は呟く。そして再び綾子に質問をした。
【正統派イケオジ? それともワイルド系イケオジ?】
【ワイルド系かなぁ? 車もSUVだったし。それに無精髭もありました】
【わかった! 俳優の矢部寛だ!】
【ざんねーん、違いまーす】
【わかんない。降参します。いいからおせーて】
【『God』さんびっくりしますよ】
【何で?】
【『God』さんのお知り合いだから】
【…………】
【図書館に『フロストフラワー』を……】
【マジか? 神楽坂先生か?】
【ピンポーン! 正解です】
【そりゃびっくりだな―。アレ? 先生今別荘に行ってるのか―?】
【みたいです。お陰様で本のお礼を言う事が出来ました】
【あーそれは良かったね】
【おまけに】
【?】
【ご自宅にまだ『フロストフラワー』がいっぱいあるそうなので今度送ってくれる事になりました】
【すげーマジか? 良かったじゃないか】
【はい、今現在も絶賛感激中です! あ、でも一つ言い忘れちゃって】
【何?】
【『フロストフラワー』にサインを入れて下さいって言うのを忘れました】
【なんだ、そんな事か。じゃあ僕がメールしておいてあげるよ】
【本当ですか? 嬉しい! ありがとうございます】
【それくらいならなんて事ないよ。でも好きな作家さんに会えて良かったね、それにしても本当に運がいいなー】
【はい。なんか最近自分でも驚くような事ばかりが続いてびっくりです。図書館の『フロストフラワー』の件も今日の事も。これも全て『God』さんのお陰です、ありがとうございます。やっぱり『God』さんは『神』かもしれません】
【神様『かも』じゃなくて神なんだよ。ハッハッハッ】
【フフッ、本当にそう思えてきました。あ、そう言えば聞くのを忘れていましたが『ベルギーチョコパフェ』食べました? お味どうでした?】
仁はドキッとする。
(買ってねーし食ってねー)
そこで慌ててパソコンで呟きサイトを開き『ベルギーチョコパフェ』についての評判に目を通す。それをそのまま書いて送った。
【うん、かなり濃厚で美味かったねー、ムースとプリンの甘さが控えめになったのかな? 僕にはちょうど良い甘さだったよ】
【さすが『God』さん舌が肥えてる。あの甘さ控えめはいいですよね、罪悪感無く食べられます】
綾子が怪しんでいないようだったので仁はホッとした。
それからしばらく他愛もない会話をしてから二人はメッセージのやり取りを終えた。
気付いたら一時間近くやり取りをしていたので仁は驚く。
「これだったら電話で直接話した方が効率的じゃねーか?」
しかし電話はまずいとすぐに気が付いた。
「声でバレちゃうかもしれないしな」
ガッカリした仁はキッチンへ行きコーヒーを淹れる。そして再びテーブルへ戻るとコーヒーを飲みながら道の駅での出来事を振り返った。
(傍で見るとさらに美人だったな。化粧っ気があんまりないのにあんだけ美人なんだからきっとバッチリメイクをしたらモデル並みに化けるだろうな)
間近で見た綾子は本当に美しかった。思っていた通り目鼻立ちのはっきりしたエキゾチックな美女だった。
声は想像よりも低く大人っぽい印象だった。時折見せるはにかんだような笑顔はとても上品だった。その笑顔はまさに『天使の微笑み』いや、『女神の微笑み』だ。
ジムニーまで走って行く姿は走り慣れている人のフォームだった。女性なのにジムニーに乗るくらいだ、そしてスノボやスキーもやっていたから元々はアクティブ派なのだろう。車の運転も上手いし料理も上手。綾子は非の打ちどころのない女性だった。
(下手なのは写真撮影くらいか?)
仁は綾子が必死に写真撮影をしている姿を思い出してクックッと笑った。
(嫁にするには申し分ない女じゃないか。なのに何で離婚をしたんだ? 子供を交通事故で亡くしたからといって必ずしも皆が離婚する訳じゃないだろう? それなのになぜ?)
仁は疑問に思う。
(あの若さなら新たにもう1~2人子供を作る事だって出来たんじゃないか? 彼女にはまだ女としての色香が溢れている。もし俺が彼女の旦那だったら絶対そうするのに)
仁はその謎を解きたくなる。しかしそれは綾子のプライベートへ踏み込んでしまう事になる。もしかしたら綾子が忘れようとしていた傷をえぐる事になるかもしれない。そう思うと仁は躊躇してしまう。
気付くと仁は画面いっぱいに表示されていた『ベルギーチョコパフェ』の画像をじっと見つめていた。
(一度食ってみるかな)
そう思いながらパフェの画面を消すと仕事の続きを始めた。
一方、綾子は聞いて欲しい事を『God』に全て聞いて貰えたので満足していた。
『フロストフラワー』へのサインの事も仁が頼んでくれると言ってくれたのでラッキーだ。
(神楽坂氏には住所と名前を教えてしまったけれどそれが『God』さんに漏れる事はないのかな? まあ漏れたとしてもきっと『God』さんなら大丈夫だとは思うけれど)
そこで綾子は道の駅での出来事を思い返す。
(神楽坂先生、凄く素敵な人だったなー。あんなに堂々としてカッコイイんだもの、絶対にモテるに決まってるわ。そう言えば以前有名女優やモデルとの恋の噂が出ていたわね。きっと今も素敵な恋をしているんだろうなー)
綾子は自分がいる場所とは全く異なる煌びやかな世界を想像して思わずフフッと微笑んだ。
しかし次の瞬間ハッとする。
その時綾子は最近自分が笑ってばかりいる事に気付いた。そして笑う事だけじゃなく人と沢山会話をしている事にも気付く。
ここへ来てからの半年綾子は誰とも話さない日々が続いていた。時折口を開くのは店で買い物をする時や宅配便を受け取る時だけだ。それ以外ではほとんど口を閉ざしていた。
しかし今は毎日誰かと会話をしている。それも楽しい会話ばかりだ。
綾子は窓辺まで行くと出窓に飾ってあるフォトフレームを手に取る。そこには理人の写真が入っていた。
(理人、ごめんね……ママは一人で楽しんでいたわ、本当にごめんなさい。決してあなたの事を忘れていた訳じゃないのよ、許して…)
綾子は悲し気な表情で呟くと息子の写真をギュッと抱き締めた。