テラーノベル
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チャイムが鳴り終わる前に、肩を掴まれる。
そのまま引きずられる。
机の前。
立たされる。
距離が近い。
囲まれる。
「今日これな」
スマホが向けられる。
カメラが開いてる。
逃げ場を塞ぐ道具として出される。
「誰が一番嫌いか、ちゃんと名前で言え」
軽い声。
でも内容は逃げ場がない。
「“いない”は禁止な」
すぐに条件が足される。
「全員好きも無し」
潰される。
「早く」
カウントが始まる。
指が立つ。
三、二——
遥の口が開く。
「……いない」
反射。
一番安全に見える答え。
その瞬間、横から頭を叩かれる。
はっきり音が出る。
「今言ったよな禁止って」
即罰。
間を与えない。
「聞いてねえの?」
もう一発。
今度は強い。
視界が揺れる。
「ちゃんとやれよ」
“やってない”で固定される。
「もう一回」
リセットじゃない。
回数だけ増える。
「誰が一番嫌い」
周りも被せてくる。
「名前で」
「フルネームな」
「逃げんなよ」
音が重なる。
近い。
耳に刺さる。
遥は視線を動かす。
誰かを選ぶ。
選んだ瞬間に崩れる。
分かってる。
でも止まれない。
「……えっと、」
詰まる。
腹に膝が入る。
浅く。
でも息が切れる。
「止まるなって」
笑いながら言う。
「はい、言え」
時間を潰さない。
遥は口を動かす。
「……田中」
出る。
一人。
一番視線が外れていたやつ。
安全そうに見えた場所。
その瞬間、空気が一段変わる。
「は?」
田中が前に出る。
距離が詰まる。
「俺?」
低い声。
逃げ道が消える。
「何で?」
詰められる。
即座に理由が必要になる。
遥は言葉を探す。
「……いや、あの、違くて」
逃げる。
すぐ潰される。
頬を掴まれる。
強く。
「違くねえだろ今言ったの」
固定される。
発言が確定する。
「理由」
短く言われる。
逃げ場がない。
「……なんとなく」
出る。
一番浅い理由。
その瞬間、笑いと同時に音が来る。
腹を蹴られる。
さっきより強い。
体が折れる。
でも掴まれて倒れない。
「なんとなくで俺?」
田中の声。
近い。
「舐めてんの?」
もう一発。
今度は横から。
脇腹に入る。
痛みで息が崩れる。
「ちゃんと言えよ」
周りが乗る。
「どこが嫌い」
「具体的に」
「性格?顔?声?」
選択肢が増える。
でもどれを選んでも崩れる。
遥は口を開く。
「……その、話し方が」
出す。
無理に具体的にする。
その瞬間、また空気が動く。
「は?」
田中が一歩近づく。
ほぼ目の前。
「俺の話し方が何」
詰める。
距離で潰す。
「……ちょっと、怖くて」
言い切る。
さっきの“怖い”がまた出る。
ズレる。
すぐ拾われる。
「怖いから嫌いなんだ」
笑いが広がる。
「じゃあ他のやつは?」
横から入る。
逃げ道を増やして潰す。
「全員怖いの?」
矛盾を作られる。
遥は言葉を探す。
間が空く。
その間に、後ろから首を引かれる。
軽くじゃない。
息が詰まる位置。
「止まるなって言ってんだろ」
耳元で言われる。
酸素が足りない。
思考が鈍る。
「……違う」
出る。
でも曖昧。
「何が違う」
締めが少し強くなる。
視界が狭くなる。
「……田中が、強いから」
無理に言葉を作る。
理由にする。
その瞬間、また笑い。
「強いから嫌いなんだ」
言い換えられる。
ズレる。
勝手に意味が変わる。
「じゃあ弱いやつは好きなんだ」
別のやつが入る。
逃げ場を潰す。
遥は首を振ろうとする。
動かない。
「……違う」
小さく出る。
「何が違う」
即座に戻される。
ループになる。
同じ場所に戻される。
「ちゃんと整理して言えよ」
要求が上がる。
でも時間はない。
周りは待たない。
「はい、もう一人言え」
唐突に追加される。
逃げたと思わせて、増やす。
「次、誰が嫌い」
終わらない。
遥は目を動かす。
さっき名前を出したせいで、視線が怖い。
どこを見ても刺さる。
「……えっと、」
詰まる。
すぐに背中を叩かれる。
強い音。
「遅い」
罰。
「三秒で言え」
カウントが始まる。
三、二——
「……佐藤」
出る。
今度は近くのやつ。
逃げ切れない位置。
「俺?」
佐藤が笑う。
でも目が笑ってない。
「何で」
すぐ来る。
間がない。
遥は言葉を出す。
「……さっき、笑ってたから」
出る。
事実に近いもの。
でもそれが一番危ない。
空気が一瞬で変わる。
「笑ったら嫌いなんだ」
言い換えられる。
周りが乗る。
「じゃあ今も嫌いだな」
笑いながら、腹に拳が入る。
鈍い音。
息が抜ける。
「ほら、理由ちゃんとしてねえからだろ」
結論にされる。
全部、遥のせいに戻る。
「ちゃんと考えて言えよ」
要求がまた上がる。
でも時間は増えない。
むしろ減る。
「次」
また来る。
終わらない。
遥は分かり始める。
何を言っても、どこかで崩れる。
でも止まると、その場で返る。
(ちゃんと選べてない)
(ちゃんと説明できてない)
(だからこうなる)
外の声と同じ形で、内側が固まる。
「もう一人」
声が来る。
逃げ場は、最初から無い。
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コメント
1件
うわ……読み終わって、しばらく息ができなかった。この空気の詰まり方、すごいね。地の文をほとんど使わず、短い動作と会話だけでここまで閉塞感を出すの、めちゃくちゃ巧みだと思う。「逃げ場がない」って何度も繰り返されるたびに、読んでるこっちの視野も狭まる感じがした。特に「ちゃんと選べてない」「だからこうなる」って遥自身が内側で呑み込んでしまうところ、胸が苦しくなった。ruruhaさんの文体、こういう“居心地の悪さ”を描かせると本当に異様な密度だね……。