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土曜の午後。隼人の家の前で待っていた大地は、落ち着かない足取りで玄関をちらちら見つめていた。
 「……お前、さっきからそわそわしすぎじゃね?」
 隼人が呆れ顔で言う。
 「べ、別に! ただ、隼人の幼なじみってどんな子かなーって思っただけ!」
 声が裏返る大地。
 そこへ玄関が開き、元気な声が飛び出した。
 「隼人ー! ひさしぶり!」
 現れたのは肩までの髪を揺らす明るい笑顔の女の子、佐倉みのり。
子どものころ隼人とよく遊んだという彼女は、都会から久々に里帰りしてきたらしい。
 「うわ、ほんとに大きくなったなぁ、隼人!」
 「そっちこそ。……って、背ちょっと伸びた?」
 気さくに笑い合うふたりを見て、大地は無意識に姿勢を正す。
 萌絵と涼も合流し、即座に実況が始まった。
 「幼なじみヒロイン、ここで投入!」
 「空気が恋愛ラブコメだな」
 「おい、お前ら!」と隼人がツッコむが、大地は妙に無言。
 みのりは皆にお土産を配りながら、子どものころの思い出を次々と語る。
 「隼人って昔からすぐ泣きそうになるとこ可愛くてさ〜」
 「ちょ、やめろよ!」
 教室でのクールな隼人を知る大地は、目を丸くする。
 「へぇ、隼人が泣き虫……」
 ぽろりと出た声に、みのりがにっこり振り向く。
 「大地くんだっけ? よろしく! 隼人から話聞いてるよ」
 「えっ、オレの話!?」
 一瞬で頬が熱くなる大地。
 萌絵が耳元で囁く。
 「はい、大地、完全に気にしてる〜」
 涼も冷静に続ける。
 「独占欲、兆候あり」
 その後、みのりを交えたトランプ大会が始まったが、大地はいつになく集中できない。
隼人とみのりが楽しげに笑い合うたび、胸がチクッとする。
 帰り際、みのりは大地に軽く手を振った。
 「大地くんも、また遊ぼうね!」
 「……う、うん!」
 みのりが去ったあと、隼人がじっと大地を見つめる。
 「お前さ、今日変じゃなかった?」
 「な、なんで!?」
 「顔、赤いし。……もしかして、ヤキモチ?」
 「ち、ちがうし!!」
 必死に否定する大地に、隼人は小さく笑った。
 「……ま、いいけどさ」
 大地は胸の奥がまだざわついたまま、空を見上げた。