テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ファストフード店は、夜でも明るかった。蛍光灯の白い光。油の匂い。
家族連れと学生の笑い声。
その中に、場違いな一団が入ってくる。
同中、他中。
制服も私服も混ざった集団。
誰が主犯か、もう区別はない。
遥は、最後尾を歩かされる。
薄着のまま。
コートはない。
フードも被らせてもらえない。
「ほら、震えてる」
「寒いんだ? 自業自得だろ」
その会話の延長で、遥を見る。
レジに並ぶ前、突然背中を押される。
「邪魔」
肩がぶつかり、よろける。
「ちゃんと立てよ」
「だらしねぇな」
床は滑らかで、転べば、もっとやられるのが分かっている。
席に着く。
遥には、椅子はない。
「そこ」
指さされたのは、通路の端。
壁際。
立ったまま。
「犬みたいでちょうどいいだろ」
笑い声。
知らない中学の連中も、遠慮なく混ざる。
誰かが言う。
「てかさ、なんで薄着なん?」
「寒いって言えばよかったじゃん」
その問いは、責めるための前振りだ。
「言わなかった=我慢できるってことだろ」
「つまり、罰に耐えられるって証明な?」
論理ですらない。
でも、全員が納得した顔をする。
突然、腹に拳が入る。
鈍い音。
息が詰まる。
「声出すなよ」
「店の迷惑」
別の方向から、脇腹。
靴先で、軽く、でも確実に。
殴る理由は、薄着。
「寒い格好してきたお前が悪い」
「寒いなら、体動かせよ」
また一発。
遥は、膝を折りかける。
「おい、倒れんな」
「床汚す気?」
腕を掴まれ、無理やり立たされる。
(……立ってる)
(俺、ちゃんと……)
ポテトの匂いがする。
ジュースの氷が鳴る。
誰かがわざと、遥の足元に飲み物をこぼす。
「ほら、もっと寒くなったな」
笑い声。
「これで風邪ひいたらどうすんだろ」
「それも自己管理不足?」
100
別の奴が、耳元で囁く。
「家帰ったらさ、
薄着で外いたって言われるんだろ?」
「殴られるね」
「可哀想」
声に、同情は一切ない。
遥は、唇を噛む。
(抵抗したら……)
(ここで騒いだら……)
店員がちらっと見る。
でも、誰も止めない。
「友達同士のじゃれ合い」
そう見える距離と配置。
最後に、強く背中を叩かれる。
「ほら、立ちっぱなしで疲れた?」
「罰なんだから、当然だろ」
薄着にさせたことは、
完全に遥の責任にすり替えられている。
「次、行くぞ」
それは移動であって、解放ではない。
遥は、足の感覚が鈍いまま、黙って後ろにつく。
(……寒い)
(……痛い)
でも一番強いのは、
(俺が悪いってことに、もう、誰も疑問を持ってない)
という実感だった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!