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朝、登校した大地が机に座ると――ノートの上に一枚の紙が置かれていた。 そこには力強い文字でこう書かれている。


『死ね』


「おぉー! 朝から隼人の愛のメッセージだぁ!」


「違ぇよ! ただの嫌がらせだ!」


隼人が慌てて紙を取り上げようとするが、大地は胸にぎゅっと抱きしめた。


「これは隼人からの“死ぬほど好き”の略だな! 俺にだけくれる熱烈ラブレター!」


「お前の脳みそどうなってんだ!」




1時間目。

大地は授業中、こっそりそのメモをノートに貼り、ペンで丸をつけていた。


「……何してんだよ」


「国語の勉強!」


「は?」


「“死ね”の“し”は“しあわせ”の“し”!」


「無理矢理だろ!」


「“ね”は“ねぇ、隼人”の“ね”! つまり“しあわせになろう、ねぇ隼人”ってこと!」


「バカやめろぉぉ!」


クラスは爆笑、先生まで肩を震わせていた。




休み時間。

隼人はため息をつきながら、大地の机にまた新しい紙を置いた。


『消えろ』


それを読んだ大地は目を輝かせる。


「おおおっ! これは“消えろ=俺以外のやつの前から消えろ、俺のものになれ”ってことだな!?」


「違う! 字面通りだ!」


「いやいや、これもうプロポーズじゃん! “俺のそば以外にいるな”って……隼人、重い男だなぁ」


「てめぇぇぇ!」




昼休み。

購買からパンを持って戻ってきた隼人が見ると、大地は机に紙をずらっと並べていた。


『死ね』『消えろ』『バカ』


それらの下に赤ペンで一文ずつ書き加えている。


『死ね → 死ぬほど好き』

『消えろ → 他の奴の前から消えて俺のそばに来い』

『バカ → 愛すべきバカ』


「何勝手にラブレターコレクション作ってんだよ!」


「だって、隼人の純情が全部ここにある!」


「やめろぉぉぉ!」




放課後。

帰りの支度をしていると、隼人が小さくため息をついた。


「……お前、本当にバカだな」


「ありがと! 隼人にしか言われたくない褒め言葉!」


「褒めてねぇ!」


「いや、バカってつまり“俺にしかわからない可愛い存在”って意味でしょ?」


「そんな意味じゃねぇよ!」


隼人の耳が赤い。

それを見て、大地はにやっと笑った。




帰り道。

夕暮れの道を並んで歩く二人。

大地がふと、胸ポケットから例の紙切れを取り出す。


「なぁ隼人」


「……なんだよ」


「俺さ、こういうの嬉しいんだよな」


「はぁ? “死ね”って言われて嬉しい奴いるかよ」


「だって隼人からの言葉だもん。俺に向けてくれた気持ちなら、どんな形でも嬉しい」


「……っ」


「それに、“死ね”って一番強い言葉だろ? つまりそれだけ俺のこと考えてるってことじゃん」


「……バカ」


夕日の中、隼人は小さく呟いた。

それを聞き取った大地はにっこり笑う。


「うん、ありがと。俺も隼人のこと、死ぬほど好き」


真っ赤になった隼人の顔を見て、大地は今日も大満足だった。


いじめのはずがプロポーズでした

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