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#一次創作
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放課後。
教室には西日が差し込んでいる。
相談者は椅子に座ったまま、開いたノートを見ていた。
書くつもりだったのか。
それとも、ただ開いていただけなのか。
「変な話なんですけど、優しくされると怖くなるんです」
遥は数学の問題集を閉じる。
「何」
「嫌じゃないんです。むしろ嬉しいし、ありがたいとも思う。でも、逃げたくなる」
教室が静まる。
「普通、逆ですよね。優しい人の方が安心するはずなのに、何か落ち着かない」
沈黙。
窓の外から運動部の声が聞こえる。
「どんな時」
遥が聞く。
相談者は考える。
「心配してくれたり、話聞いてくれたり、大丈夫って言われたり。そういう時です」
少し苦笑する。
「申し訳なくなるんです。それに、疑っちゃう」
教室が静まる。
「何を」
「いつまで続くんだろうって。今だけじゃないかとか、何か裏あるんじゃないかとか、そのうち嫌われるんじゃないかとか。そういうことばっか考える」
遥は窓の外を見る。
「優しさが怖いんじゃないな」
短く。
相談者は顔を上げる。
「え」
「終わるのが怖い」
教室が静まる。
相談者は止まる。
遥は続ける。
「優しくされた後、急に冷たくなる。離れていく。怒られる。そういう経験が多いと、次もそうなる気がする」
沈黙。
相談者は黙る。
図星だった。
「……俺、期待しない方が傷つかなくて済むって思ってるんです」
遥は机に指を置く。
「期待しないと、確かに傷は浅い」
一拍。
「でも、嬉しさも浅くなる」
教室が静まる。
相談者は何も言えない。
遥は続ける。
「人を信じるって、全部信じることじゃない。裏切られないと思い込むことでもない」
一拍。
「傷つく可能性ごと受け入れることかもしれない」
相談者は少し困った顔をする。
「それ、結構嫌ですね」
「そうだな」
遥は否定しない。
「楽ではない」
教室が静まる。
「じゃあ、ずっと疑ってた方がいいんですか」
遥は少し考える。
「疑うこと自体は悪くない。怖いのも普通」
一拍。
「ただ、怖いから全部閉めると、入ってくるものもなくなる」
沈黙。
相談者は窓を見る。
夕日が少しずつ赤くなっている。
「何か、俺、優しくされたいくせに、優しくされると逃げて。面倒ですね」
遥は鞄を持つ。
「面倒なのは」
少し間を置く。
「優しさじゃなくて、傷ついた記憶の方かもしれない」
教室が静かになる。
相談者は黙ったまま、その言葉を聞いていた。
誰かに優しくされると怖くなる。
それは、優しさを嫌っているからではない。
本当は欲しかったものだからこそ、失うことや裏切られることが怖くなる。
だから、すぐに信じられなくてもいい。
安心できなくてもいい。
怖いと思いながら、少しずつ誰かの優しさを受け取っていく。
そんな時間が必要なこともある。
コメント
3件
アイコン変えた!?久しぶり!
うわあ、このエピソード、すごく沁みました……。「優しくされると怖くなる」って感覚、すごくわかる気がします。特に「終わるのが怖い」って遥が言い当てたところ、胸がギュッと苦しくなりました。期待しないことで傷つくのを防ぐけど、同時に嬉しさも浅くなる——そのバランスの難しさを、こんなに優しく言葉にしてくれるなんて。最後の「怖いと思いながら、少しずつ受け取っていく時間が必要」という一文に、ほっと救われた気持ちになりました。ruruhaさんの描く人間の繊細な心の動き、本当に好きです。