テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
木は、逃げない。
だから選ばれた。
「ほら、ここ」
「人じゃないから固定しやすい」
背中に硬い感触。
動こうとすると、止められる。
「暴れるなよ」
「抵抗すると“的”ズレるだろ」
誰かが笑う。
「動く的とか、初心者向けじゃん」
「今日は命中率勝負な」
遥は息を整えようとして、失敗する。
「……やめろ」
「聞いた?」
「“やめろ”だって」
「拒否きたー」
「じゃ、ペナルティ追加」
視線が集まる。
「人間なら嫌がるよな。でもさ、人間扱いされてないから問題なし」
ボールが当たる。
数える声。
「一」
「惜しい」
「次、顔の横」
遥は歯を噛む。
「……俺、同意してない」
即座に返る。
「またそれ」
「的が喋るな」
「集中できない」
「ほら、口減点」
「喋るたび難易度上げよ」
木に背を預けたまま、遥は考える。
どう言えば“伝わる”のか。
「……拒否したのは、
受け入れてないって意味だ」
間。
「意味とかいらね」
「結果が全て」
「縛られてる=参加中」
「参加中=同意」
「はい、論破」
笑いが重なる。
「的ってさ、当てられるためにあるんだよな。外れたら意味ない」
「意味ない存在って、楽でいいよな」
遥の胸に、鈍い痛み。
(俺が悪い?
抵抗したから?
拒否したから?)
自己嫌悪が湧く。
それでも、言葉を探す。
「……嫌だ 」
「感情申告、却下」
「数値じゃない」
「ほら、次」
「点数つけよ」
「当たったら喝采、外れたら罰」
拍手が起きる。
「いい的!」
「動かないの最高」
#オフィスラブ
ゆうクロ。
422
20,617
誰かが囁く。
「抵抗しないと、楽だろ?」
「抵抗したから、こうなる」
遥は目を閉じる。
(それでも)
(同意してない)
声に出す勇気は、もうない。
出せば、また理由にされる。
「ほら、終わったら解放な。多分」
「“多分”が一番盛り上がるんだよ」
笑い声。
数える声。
評価する声。
木は黙っている。
的は喋らない方が、好まれる。
遥は、
人間であることを主張するたび、
遊びを盛り上げる存在になる。
コメント
1件
うわああ……読み終わって胸がぎゅーってなったよ😭💔「的」扱いされる遥くんの無力感、読んでてこっちまで息苦しくなった……「人じゃないから固定しやすい」とか「人間扱いされてないから問題なし」って言葉、めっちゃ刺さる。拒否しても論破されて笑いものにされる辛さ、ちゃんと伝わったよ。それでも「同意してない」って心で思い続けてるのが泣ける……次が気になりすぎる!🆘