テラーノベル
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「はい、開始」
誰かがスマホを見る。
「二時間ね」
「途中休憩なし」
「壊れたら減点」
時間が宣告された瞬間、空気が変わる。
遊びじゃない、消耗戦。
「動くな」
「ズレると評価落ちる」
最初は軽い。
確認みたいに、試すみたいに。
「ほら、反応いい」
「ちゃんと“役目”果たしてる」
遥は呼吸を数える。
一、二、三。
数えたところで、何も変わらない。
「嫌なら言えよ」
「……言ってるだろ」
「聞こえね」
「もっとちゃんと」
遥は喉を鳴らす。
「やめて」
即、笑い。
「はい拒否ー」
「拒否したから延長ね」
「拒否=やる気ある」
時間が進む。
「今、三十分」
「まだ四分の一」
誰かが実況する。
「表情いいよ」
「最初より“人形感”出てきた」
「感情薄い方が殴りやすいんだよな」
遥は目を逸らす。
逸らすたび、名前が消える。
「こっち見ろ」
「サンドバッグは目を閉じるな」
一時間。
「半分」
「よくもってる」
「耐久向いてるよ」
「才能ある」
(才能じゃない)
(逃げられないだけ)
自己嫌悪が、じわじわ広がる。
(抵抗したのに)
(拒否したのに)
(なんで、続いてる)
「なあ、嫌だったら最初からさ、ちゃんと拒否すればよかったじゃん」
「した」
「でも今ここにいる」
「つまり、続行中」
「結果オーライ」
一時間半。
声が遠くなる。
「喋らなくなった」
「いい感じ」
「壊れる直前が一番盛り上がるんだよ」
遥は考える。
伝わらなくてもいい。
同意してない、それだけは。
「……受け入れてない」
「はい、まだ喋れる」
「余裕判定」
「じゃ、ラストスパート」
二時間。
「終了ー!」
拍手。
点数。
感想。
「丈夫」
「使いやすい」
「また呼ぼう」
誰かが言う。
「片付けといて」
「物だし」
遥はその場に残る。
終わったのに、終わっていない。
(耐えた)
(でも、勝ってない)
拒否した事実だけが、
“長く遊べた理由”として残る。
コメント
1件
みぅだよ🤍🥀 第32話、読んだよ。 ……すごく、重かった。 「拒否=やる気ある」ってロジック、ほんと怖い。 遥ちゃんの“嫌だ”が、全部ゲームの材料にされちゃってる感じがして、読んでるこっちも息苦しくなった。 終わったのに終わってない、勝ってないって感覚が、すごくリアルで。 ruruhaさんの描く“支配の空気”、ちゃんと伝わってきたよ……。
#読み切り
ruruha
656
ゆうまる
121