テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「日下部くん……相談してもいいですか?」
相談室の扉を開けた女子は、少しうつむき加減で机の端に手を置いた。
「私……自信がなくて、何をやってもダメな気がするんです」
日下部は机に肘をつき、静かに頷いた。
「……うん、そういう気持ち、わかる気がする」
「でも、挑戦はしたくて……。やってみたいことがあるんですけど、怖くて」
日下部は少し考え込み、指先で机の角を叩いた。
「怖いよな。自分に自信がないと、余計に怖くなる」
「そうなんです……。挑戦したら、絶対失敗する気がして」
「失敗は、絶対ってもんじゃねぇけどな」
日下部は言葉を選びながら、でも正直に言った。
「挑戦するってことは、失敗も覚悟するってことだ。でも、失敗してもお前はお前だし、全部終わりになるわけじゃねぇ」
女子は小さく息をつき、目を伏せたままつぶやく。
「でも、失敗したら恥ずかしいし、みんなに笑われるかも」
「……笑われたっていいじゃねぇか」
日下部は少し肩をすくめた。
「恥ずかしいって思うのも、人間なら当たり前だし。笑われたって、それで終わりじゃない。気にする時間より、やりたいことやる時間を大事にしたほうが得だ」
女子は眉間に少し皺を寄せて考え込む。
「……やりたいけど怖い、ってずっとぐるぐるしてて」
「その気持ち、悪くないと思う」
日下部は低く答えた。
「怖いからって挑戦しないわけじゃねぇ。怖くても、一歩踏み出せるかどうかだ」
「一歩……」
女子は小さく手を握り直した。
「うん。最初は小さな一歩でもいい。お前のペースで進めばいいんだ」
沈黙が少し続き、外の風が窓を揺らす。
女子は机に手を置き、ゆっくり深呼吸した。
「……わかりました。少しずつでも、やってみます」
日下部は、少しだけ微笑むように頷いた。
「その気持ちがあれば、別に自信なんて最初からいらねぇ。やってみりゃ、わかることだ」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!