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放課後。
大地が下駄箱を開けると――上履きがない。
「おおっ、来た来た! 本日のラブイベント!」
「……違うだろ。靴がなくなっただけだ」
「いやいや隼人、これは完全に“シンデレラ”だよ!」
「誰がだ」
「俺!」
そう言うや、大地は片足裸足でくるりと回った。
「――『隼人王子、俺のガラスの靴を探して!』」
「やめろぉぉ!」
結局、大地は片足靴下で校舎を歩く羽目になった。
通りすがりのクラスメイトが笑いをこらえる。
「片足だけ靴下って、なんか新しいファッションだな」
「でしょ! 俺、隼人専属モデルだから!」
「やめろ!」
隼人は額を押さえながら大地を追いかける。
職員室前の廊下。
大地はしゃがみこんで、自分の靴下のつま先をじっと見つめていた。
「……これもしかして、隼人からの“俺とお揃いで裸足になろう”ってメッセージ?」
「んなわけあるか!」
「そうか! じゃあ次の体育館シューズも隼人とペアにしよう!」
「勝手にすんな!」
数十分後。
体育館の倉庫で、隼人はこっそり隠しておいた大地の上履きを取り出した。
そこへタイミングよく大地が登場。
「おー! やっぱり隼人王子!」
「ち、違ぇ! 俺はただ――」
「はいはい、俺のガラスの靴持ってきてくれるんでしょ?」
「ちげぇって!」
「さぁ、俺の足に履かせてみて!」
「やめろぉぉ!」
大地は椅子に座り、足を差し出して待機。
観念した隼人は、ぶっきらぼうに上履きをぽんと投げ渡した。
「自分で履け!」
「ツンデレ王子だぁ!」
帰り道。
夕暮れの川沿いを歩きながら、大地は片方の上履きを抱えてにこにこしていた。
「隼人、俺の靴探してくれてありがとな」
「……別に」
「でも、やっぱり隼人が俺に靴履かせてくれるシーン、見たかったなぁ」
「……バカか」
「バカじゃない! だってそれ、完全にプロポーズの儀式だろ?」
「はぁ!?」
「ほら、靴を履かせる=結婚指輪はめる、みたいな!」
「意味わかんねぇ!」
「つまり、隼人は俺に一生歩む道を用意してくれるってこと!」
「勝手に解釈すんなぁぁ!」
そのとき、川辺で風が吹き、大地の上履きがひらりと飛んで水面に落ちそうになった。
咄嗟に隼人が飛び出し、片手でキャッチ。
「……ったく、だからバカなんだよ」
「おおおっ! 命がけで靴を守るなんて、やっぱ隼人王子だ!」
「違う!」
「じゃあ言い直す! 俺の靴と一緒に、俺の心も守ってくれる隼人王子、愛してるー!」
「やめろぉぉぉ!」
夕焼けに響く声とツッコミ。
こうしてまた、いじめと称したプロポーズ劇は続いていくのだった。