テラーノベル
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「汚いから洗ってやれよ」
昼休みの終わり、遥は教室から連れ出された。
向かった先は、校舎裏の誰もあまり来ない場所だった。
「ここなら先生も来ねぇだろ」
「ちょうどいいじゃん」
地面に溜まっていた泥を誰かが靴先で掬い、遥の制服に押しつける。
「……やめろ」
「やっと言った」
笑い声が上がる。
「じゃあ綺麗にしてやるよ」
ホースから水が出た。
冷たい水が頭からかかり、髪も制服も一気に濡れる。
「うわ、汚ねぇ」
「泥ついてんじゃん」
「だから洗ってやってんだろ」
遥は目を閉じた。
寒い。
身体が震える。
それでも周りは面白がっている。
「頭も洗えよ」
「これ使えばいいじゃん」
洗剤を手にした男子が、遥の髪に無理やり塗りつける。
「……やめて」
「動くなって」
髪を乱され、水をかけられる。
「泡立たねぇな」
「もっとやれよ」
「こいつ全然反応しない」
遥は俯いた。
寒さと気分の悪さで、頭がぼんやりしていく。
さっきまで聞こえていた笑い声も、少し遠くなった。
「おい、立てよ」
肩を押される。
遥の膝が揺れた。
「……無理」
「は?」
「ちょっと……待って」
「またそれ?」
誰かが笑う。
「具合悪いなら最初から来んなよ」
「でも休んだら仕事できないじゃん」
その言葉に、別の男子が遥の肩を掴んだ。
「ほら、仕事」
遥は立とうとした。
けれど、足に力が入らない。
その場にしゃがみ込む。
「おい」
返事ができない。
「立てって」
肩を蹴られる。
身体が横へ崩れる。
「寝てんじゃねぇよ」
もう一度、足先で小さく押される。
それでも遥は動かなかった。
「……つまんな」
「こいつ、本当に限界じゃね?」
「知らねぇよ」
笑いながら、誰かがホースを放り投げる。
水だけが地面を流れていく。
遥は濡れたまま、顔を上げられなかった。
寒い。
苦しい。
でも、それ以上に怖かった。
ここで動けなくなったら、もっと怒られる。
もっと迷惑をかける。
だから起きなければと思うのに、身体だけが動かなかった。
コメント
7件
「…っ、読んでて心臓ぎゅーってなったよ…😭💦」 遥の「寒い」「苦しい」って内面がひしひし伝わってきて、自分もその場にいるみたいだった。特にここで動けなくなったらもっと怒られる、迷惑かけるって思って無理に立とうとするけど身体が動かないところがもう…切なすぎる。 水とか洗剤の冷たさとか、周りの笑い声が遠くなる感じとか、五感ごと突き刺さる描写がすごい。続きが気になるけど、遥がちゃんと助かってほしい…🥺