テラーノベル
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遥が地面に倒れたまま動かなくなっても、誰も慌てなかった。
「……もういいだろ」
「飽きた」
そんな言葉だけが落ちて、靴音が一つずつ遠ざかっていく。
誰かが振り返った。
「お前、授業戻れよ」
遥は答えられなかった。
「聞こえてる?」
「……うん」
「じゃあ早く来いよ」
それだけ言って、今度こそ誰も待たなかった。
残された遥は、濡れた制服のまま地面に手をついた。
起き上がろうとした。
けれど、腕に力が入らない。
何度か試して、結局またその場に座り込む。
校舎の窓から、授業へ戻っていく生徒たちの姿が見えた。
誰もこちらを見ない。
さっきまで一緒にいた連中も、もう教室へ戻っている。
先生も来ない。
探しに来る人もいない。
遥は濡れた袖を握った。
寒さで指が震えている。
それでも、助けてほしいとは思えなかった。
正確には、思ってはいけないと思った。
ここで誰かを呼んだら、また迷惑をかける。
「具合悪いなら帰ればいいのに」と言われる。
「大げさ」と笑われる。
「また人に頼ってる」と言われる。
だったら、何も言わないほうがいい。
誰にも見つからないほうがいい。
そう思っているのに、ほんの少しだけ、誰かに気づいてほしいと思ってしまう。
そのことが、ひどく嫌だった。
遥は俯いた。
校舎の中からチャイムが鳴る。
授業が始まった。
自分だけが、そこに取り残されている。
やがて遥は壁に手をつき、時間をかけて立ち上がった。
足元はまだふらついている。
それでも戻らなければならない。
戻ったところで、誰かが心配してくれるわけではない。
濡れた制服を見て驚く人も、何があったのか聞く人もいない。
むしろ、戻るのが遅ければまた怒られる。
遥はそれを分かっていた。
だから、誰にも助けを求めないまま、重い身体を引きずって校舎へ戻った。
コメント
1件
うわあ…遥くんの心が壊れそうなくらい追い詰められてて、読んでて胸が締め付けられたよ…😭💔 「助けてほしいと思ってはいけない」って自分に言い聞かせるの、辛すぎる… 誰も振り返らない風景、時計の音だけが響く感じ、情景が目に浮かんで苦しかった。 でも、それでも立ち上がろうとする遥くんの強さも感じた…! この先、少しでも温かいものが彼に届きますように…って祈りたくなるエピソードだった…🌸